第55幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「銀さん、もう帰りましょうよ。この森怖いです」
神楽がカブトムシを捕まえたいと駄々こね、そのタイミングでテレビではカブトムシが高く売れると報道していた。それを見た銀時たちはカブトムシを捕まえて売りさばこうと目論んで森へ来ている。
茹だるような暑さの中、虫かごに虫あみを持って森の中を歩き回っているのだが、カブトムシを見つける前に不気味な物を見つけてしまった。
新八が見つけてしまったそれは全裸で立っている蜂蜜まみれの男。
「体中にハチミツ塗りたくってたネ」
「気にするな。妖精だ妖精。樹液の妖精だよ。ああして森を守ってるんだよ」
真選組の局長がこんな所で何をしてるんだとツッコミたいが、彼と関わるとろくでもないことに巻き込まれるのは目に見えている。ここは黙って見て見ぬふりをしたほうが懸命だ。
「でも、なんか見たことある人だったんですけど」
「ゴリね、ゴリだったネ」
「じゃ、ゴリラの妖精だ。ああしてゴリラを守ってんだよ」
意味がわからないと新八は漏らすが、銀時だってこの状況を理解できなくて困っている。こんな森に虫以外の存在がいるなんて。ましてや警察の人間があんなことをしているだなんて。
「(海が不憫すぎるだろ)」
あんな上司を持ってしまった海がとても可哀想だ。もしかしたら今頃また近藤の尻拭いをさせられているかもしれない。復帰してから間もないというのに。
ため息をつきながら森の中をひたすら歩く。今度はぐちゃりと嫌な音が耳に入った。音の方へと顔を向けるとそこには無表情でマヨネーズを木に塗りたくっている人間。
「……銀ちゃん、木にマヨネーズ塗ってる奴がいるアル」
「あれはマヨネーズの悪魔だ。目を合わせたら呪われるぞ」
「何言ってるんですか!あれ土方さんじゃないですか!あの人たち一体何やってるんですか!?なんでこんな所にいるんですか!?」
「俺に聞くなよ。あいつらがまともじゃねぇのはいつものことだろ」
今日は特にまともじゃないが。
「あいつら居るってことは海もここに居るアルか?」
「……まさか。いや、そんなまさか。海がこんなところにいるわけねぇよ。はは……ははははっ」
海はきっとここにはいない。あの子はちゃんと仕事をしているはずだ。そう願いながら銀時は土方から目をそらす。これ以上彼を見たら祟られてしまうと怯えながら。
「ぎ、銀さん!」
「今度はなんだよ新八ィ」
「あ、あれ!!あれ、海さんじゃないですか!?」
「は?何言ってんの?こんな森の中にアイツがいるわけないでしょうが。海ならきっと今頃見回りでも……って、え?」
新八がぷるぷると震えながら指さしている方角。そちらには確かに海らしき人物がいる。
「な、何やってんのお前ええええええ!!!!??」
『うるさい。叫ぶより早くこれ外してくれ』
ぷらんとぶら下げられている海はうるさそうに顔を歪める。慌てて海の元へと走りよれば、ふわりと甘い匂いが鼻腔を擽る。それは先程嫌というくらい嗅いだ匂い。海の前髪からトロリと滴っているのは黄色の液体。
「本当にお前なにやってんの……?」
手首に掛けられている手錠を外して海を降ろす。長い間掛けられていたのか手首は赤くなっていた。
『深くは聞くな』
「聞くだろうが。蜂蜜塗れでこんなところに放置されてるなんておかしいだろ。お前の上司は一体何してるわけ?暑さで頭がいかれてんの?」
『仕事。それ以外は答えられない』
「蜂蜜まみれになったり木にマヨネーズ塗るのが仕事なわけ?おたくらいつからそんな仕事するようになったの?」
『だから深くは聞くなって言ってるだろ。それより銀時』
スッと細められた目が銀時を捉える。その目にビクッと身体を震わせた。
『ここから出てけ』
.