第58幕
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「いらっしゃいませ!あっ……あーっ!土方はん!土方はんやわ!」
「珍しい!海はんもいらっしゃったの?嬉しいわぁ!」
『こんばんは……ちょっとだけお邪魔しますね』
「そないなけったいなこといわんと、いっぱい居てくださいなぁ!」
がしりとホステスに手を掴まれて海は引き攣った笑みを浮かべる。
『ゴリラって近藤さんのことだよな』
「スナックに来るゴリラは近藤さんしかいねぇだろう」
土方と海の周りに群がる嬢は口々にゴリラじゃなくて良かったと安堵の顔をしていた。彼女たちの話だと近藤は暇さえあればここに来ているらしく、とても迷惑しているとの事。
『なんか申し訳なさで帰りたいんだが』
「帰るな。何のために来たと思ってんだ」
『理由が理由だから帰りたいんだよ』
これから更なる迷惑をかけると知っているから帰りたい。近藤絡みになると皆嫌な顔をするから話辛いのだ。
『それにしてもやけに珍しがられてるな。あまりこういう所に来ないのか?』
「そんなに来ねぇよ。それを言ったらお前だって同じだろうが」
土方を見た途端、嬢の目はキラキラと輝いた。真選組副長という肩書きを持っているというのもあるだろうが、堅物な土方がスナックに来ているという珍しさもあるのだろう。
『来る理由がないからな』
キャバクラやスナックに行く理由がない。そう言うと土方はなんとも言えない顔を海に向ける。
「女に興味ないのかお前は」
『興味って……なんの?』
「好みの女と話したりとか」
『ないな』
ばっさりと言い放つと土方はため息をつきながら頭を抱える。
「聞いた俺が悪かった。だが、お前ここでその発言はやめておけ」
こそっと耳打ちされたが意味はよく分からなかった。とりあえず頷いておくと、土方は少し疲れの見える表情で同じように頷いた。
「土方さんご指名は?」
入口で立ち止まったまま動かない土方に支配人が声をかける。二人がコソコソと話している間に後ろで控えていた隊士たちに先に中に入るように言うと各々好みの女性を指名して席へと案内されていく。嬢に話しかけられながらテーブルへと向かう隊士らは皆手馴れた様子。
『(手馴れてるってことは何度も来てるってことだよな)』
彼女らが男性の扱いに慣れているというのもあるのだろうが、それと同じくらい隊士たちも彼女らとの会話に花を咲かせているのだ。あんなに仲良く会話をするなんて自分には出来ないだろう。グイグイ来られてしまうと困惑が先に来てしまう。なんせこれまで女性と親密な会話をしたことなんてほぼ無いに等しいから。
「あら、海くん?珍しいこともあるのね」
支配人に呼ばれてきたお妙が海を見て驚く。戸惑いがちに返事をするとお妙はいつもの笑顔で席へと案内してくれた。
「海くんが店に来るなんて初めてじゃない。いいの?ここに来てて」
『今日は色々あってね』
「ふふ。銀さんには内緒にしといてあげる」
流れるように海の前に酒が置かれる。緊張で喉が渇いていたから丁度良かった。お妙と土方の話の邪魔にならないように席の端っこへと移動してひっそりと酒を楽しむことに専念する。
「それより……どういう風の吹き回しですか?最近ゴリラがおとなしくなったと思ったら今度はあなたですか。真選組の皆さんは豪気な人が多いんですね。税金使ってキャバクラ遊びですか」
「俺だって来たくて来てんじゃねえんだよ」
「海くんを店に連れてくるなんて何考えてるんです?銀さんに見つかったらこの子怒られちゃうじゃない」
「見つかろうと見つかるまいと関係ねぇ。こいつは俺の部下だ」
「部下ならナニしてもいいと思ってるんですか?まさかこのまま酔わせてホテルに連れ込むわけじゃ……」
「なに訳わかんねぇこと言ってんの?しかもナニってなんだよ」
「ナニはナニですよ。ダメですよ。人のモノに手を出したら。あ、でもNTRするなら言ってくださいね。私そういうの大丈夫ですから」
「よく聞こえなかったんだけどなに?さっきからお前何の話してんだ?」
「銀さんのモノになっちゃった海くんを貴方が寝取るシチュエーションの妄想です」
「頭大丈夫かアンタ」
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