第57幕
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『元気そうでなにより』
「あっ……あぁ」
『それだけ元気があればすぐ治るだろ』
「そ、そうだな。早くこんなとこ出て帰らねぇとあいつらも心配するだろうしよ」
猿飛について深く追求せずに怪我のことだけを聞けばあからさまに銀時はホッとした表情を浮かべる。それでも後ろめたさが残っているのか海と目を合わせようとはしない。
『……心配して損した』
「海?」
『なんでもない。大丈夫そうなら帰るわ』
胸元がムカムカする。甘いものを食べすぎてしまった時のような気持ち悪さだ。今日は甘いものなんて食べていないのに。
今すぐこの場を離れたい。その一心でベッドから立ち上がった。
「ちょ、海!」
グイッと銀時に腕を引っ張られる。その手を振り払おうとしたが力が入らなかった。それどころか引っ張られたせいで身体が傾いてその場にぺたりと座り込んだ。
「お、おい!海!」
「坂田さん、兄さんから離れてもらってもいいですか?」
「は?」
「総悟から聞きましたよ。昨日は女の人バイクに乗せて走ってたらしいですね」
「はぁぁぁぁ!?いや、それこそ誤解だわ!!あいつは走ってないと死ぬタイプのやつだったんだよ!」
「なに訳わかんないこと言ってるんですか。泳ぎ続けないと死ぬサメみたいなこと言わないでくださいよ」
「いや、マジでそうなんだって!!」
頭上で銀時と朔夜が言い合っているのが聞こえるが止めることが出来ない。病室なんだから静かにしなくてはならないのに。
『朔夜……もう少し……静かに』
「でも兄さん!」
『ここ……は、病……』
他の患者がいるんだから騒ぐなと言いたかったのに言葉にならなかった。眠さの限界が来てしまったのかもう何も考えられない。意識を保とうとしてもそれを上回るほどの眠気が襲ってくるのだ。
「兄さん?大丈夫!?」
「海?」
ぐらりと身体が傾く。もうこれ以上は起きてはいられない。このまま寝かせて欲しい。病室の床に倒れそうになった間際、誰かの腕に身体を支えられた。それが誰なのかを見ることも出来ずに夢の中へと落ちた。
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