第84幕
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朔夜と共に海は厠へと向かった。
その間に厠で何があったのかを聞くと、最近一番隊に配属された隈無 清蔵という男が厠の掃除について熱弁していると。掃除の様子を見に来た土方に水道をセンサー式に変えて欲しいと詰め寄っているらしい。
隈無の勢いに圧倒された土方は困った末、朔夜に兄貴を連れてこいと言い放った。自分では手に負えないと判断したのだろう。
「失礼ですが副長。副長は用を足したあとにお手を洗われになりますか?」
隈無の声が聞こえたところで足を止める。こちらを振り返った朔夜に静かにするようにと口元に人差し指を立てた。
「ああ?洗うけど」
「では何故手をお洗になるのですか?一体用を足す際、なんで手が汚れるのですか」
「なんでもクソも気分悪いだろう。手ぇ洗わねぇと」
「誤魔化さないでいただきたい。もっと明確に確実に汚いなにかに触れているでしょう。それはなんですか?何に触ったんですか?何が汚いんですか?」
この男は土方に何を言わせたいんだ。
やたらと聞きたがる隈無に土方はタジタジになっている。土方がボソリと何かを呟いたのが聞こえた。
「入らないの?」
『いきなり入っていったら逆に邪魔になるかと思って止まったんだが……これは流石に土方が可哀想だから話に入るか』
センサー式の物に変えるか否かで、こんなに問い詰められるのはあまりにも哀れだ。それにこれは土方だけで決められることでもない。近藤にも話を通し、そこから上に掛け合って設備費を出してもらわなければならないから。
その費用請求の書類を書かされるのはどうせ自分だ。それならちゃんと隈無の意見を聞いた方がいい。
『なんだか随分と賑やかだな』
「お疲れ様です副長補佐!」
海に気づいた隈無は直角に腰を折る。その横で土方が助かった、と呟いているのが聞こえた。
『お疲れ様。話は朔夜から聞いた。厠の水道設備をセンサー式に変えたいんだって?』
「はい。清潔面を考えるとその方が良いかと思われます」
『そうだな。衛生面も重要だが、それに加え水道代削減にも繋がるかもしれないし』
手を洗っている間に出しっぱなしにしている隊士をたまに見かける。たかが数秒、されど数秒。塵も積もれば山となるという言葉ある通り、屯所にいる隊士らがそんな事をしていれば、水道代がどんどんと膨れ上がっていく。
無駄を無くすのであれば、その原因を排除しなくてはならない。しかも別の利点もあるというなら変更するのに越したことはない。
「さすがは副長補佐!衛生面且つ、経費削減も視野に入れるとは!」
目を輝かせる隈無に引き攣った笑みを向ける。
『それで?土方はどうす──お前、なんでそんな顔真っ赤になってるんだ?』
「お前……どっから入ってきた?」
『どっから?』
「話のどっから入ってきやがった」
『隈無の用を足したあとにどうのこうのってところから』
その言葉に土方の顔がブワッと真っ赤に染まる。
『大丈夫か?』
「こっち見んじゃねぇ!!」
『なんだよ急に』
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