第84幕
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「えー、それでは今週の掃除当番を決める」
会議室に集められた隊士達の前で紙を見ながら土方が予め決めておいた当番を伝えていくのを聴きながら、その隣で海は他の書類を捌いていく。
『……これはこっちのか』
パラパラと書類を分け、優先すべきものを前に重ねる。その間に掃除当番の報告は済んでいたらしく、何故か一番隊の者たちが酷く落ち込んでいるのが見えた。
『どうした?』
「いや、知らん」
『うん?』
頭を抱えてこの世の終わりだとでも言いたげな表情をしている彼らに首を傾げる。土方が持っている紙を横から覗き込むことで彼らの心境を察した。
『なるほどな。一番隊に厠の掃除を担当させたのか』
再度、一番隊の方へと目を向けると、彼らは海に向けて期待の眼差し。きっと海が別の隊に変えてくれると思ったのだろう。
『大変だと思うが、手は抜かないようにな』
海の一声に一番隊は地獄の底に突き落とされたような顔。
「お前、たまにそういうこと言うよな」
『そういうことってなんだよ』
「無意識にやってんのが末恐ろしいわ」
『だからなんの事だよ』
土方は一番隊に同情の目を向けるだけでそれ以上は何も言わない。
『掃除当番は決まったんだろ?俺はもう部屋に戻るからな』
「ああ。そうだ。海、お前確か午後は空いてたよな」
会議室を出ていこうとした海の背中へと土方が声をかける。
『うん?書類が終われば一応』
「ならその後、手合わせに付き合え」
『手合わせ?』
「その……最近は静かだからな。腕が鈍っちまう」
そっぽ向いて言う土方を不思議に思いながら了承の返事をした。
『分かった。終わったら声掛けるから』
「おう……。あれだ。まだ、足が動かねぇなら別に無理して付き合わなくてもいいからな」
『足?』
そこまで言われて漸く気づいた。
土方は海の為に手合わせをすると言ってきているのだと。足を怪我していたせいで刀が振れなかった海の為に。リハビリを兼ねてということだろう。
『ふはっ……!』
「あ!?てめえ何笑ってやがる!」
『いや……ふっ、大丈夫。もう足は何ともない』
だから気にしなくていいと続けた海に土方はホッと安心した表情を浮かべる。
「それならいいが……あんま無理すんじゃ──」
『じゃ、俺は書類終わらせてくるから』
土方の言葉を遮るように障子を閉める。あれ以上聞いていたら次は小言になってくるだろう。数日前に変なことに巻き込まれ、銀時と共に屯所に帰った時はこっぴどく叱られた。
どうしようもない状態だったのだと説明しても土方は聞いてくれず、結局は銀時と喧嘩までしていたのだ。
なんだか最近はやけに過保護な気がしてならない。
『自分が悪いのは分かってるけど、あそこまで心配されるとなんかむず痒いんだよな』
逆の立場であれば、海も土方の心配をするだろう。なんなら相手の所へ赴いてお礼参りをするつもりだ。
でも、あれこれと怒ることはしない。過度に干渉してしまったらいけないような気がして。
『俺はアイツの弟でもなんでもないんだけどなぁ』
年下だから目をかけられているのか。それなら自分よりも総悟や朔夜の方を構ってやれば良いものを。とはいえ、土方は近藤の手綱も引っ張っているのだから海の事を気にかけている暇なんて無いはずなのに。
『もしかして近藤さんのこともう見放したのか。確かにあのストーカーはどうしようもないけども』
諦めた方が楽になる。以前、土方にそう言った。近藤はそろそろ付き合いきれないと。もしかしたら土方も疲れてしまったのかもしれない。
『だからって今度は俺の方に向かなくてもいいんだけど』
ため息をつきつつ自室の戸に手をかける。そこで誰かが廊下をバタバタと走っているのに気づいた。
「あっ、兄さん居た!!」
『廊下は走るな!何度言えばわかるんだお前は』
「ご、ごめんなさい……。でも今急いでて!」
しゅん、と落ち込む朔夜に頭をかかえる。
『何をそんな急いでるんだよ』
「そ、それがね……厠にタマ菌が……」
『は?』
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