第83幕
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「怪我は?」
『ない。これに助けられたから』
転がっていた木刀を拾い上げて銀時の元へ持っていこうと外へ一歩踏み込む。
「来なくていい。俺がそっちに行くから。海は座ってて」
濡れるから、と銀時は海に動くなと手を向ける。言われた通り縁側に腰を下ろすと、銀時は海の横にどかりと座った。
長いこと雨の中に居たのか、髪の先からぽたぽたと水が滴っている。
『銀時こそ怪我、大丈夫なのかよ』
銃弾を受けた身なのに無理をするものだ。しかもこんな雨の中を彷徨いていたら風邪もひいてしまう。
「これくらいなんてことはないから。それより……」
銀時は海の頬を指先でなぞる。
「何もされてないか」
『ああ。問題ない』
危害を加えられるどころか、中村は海の事を気遣ってすらいた。あの人間はどうやっても悪人にはなりきれないだろう。
「それならいいけど」
『俺はされてなくても銀時はされてるだろ。あいつは?中村はどこ行ったんだ』
次会ったら絶対報復を、と思っていたのに屋敷の方に中村の姿は見えなかった。
「アイツは……」
それきり銀時は黙りこくってしまった。その間の意味を察して、海は視線を庭の蔵へと向ける。
『そ。ならやり返すことも無いな』
「そう、だな」
降りしきる雨を二人で眺める。
「なあ、海」
『ん?』
「あいつ、最期に笑ってた」
『そうなんだ。いいんじゃないか?笑えるなら』
「海に悪かったって。よろしく伝えといてくれって」
『そういうのは本人に直接言えって──』
悪態をつく海の肩にポスッと銀時の額が乗る。小刻みに震えている頭に手を乗せて優しく撫でた。
『お疲れ様、銀』
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