第83幕
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座敷牢に一人取り残され、海はため息をつく。
足を引きずりながら扉へと近づきドアノブを回すも、しっかりと鍵が掛けられていてドアノブがガチャガチャ鳴るだけだった。
『こっからどうやって抜け出すかだな』
足を怪我していなければこんな扉蹴り飛ばしている。それほどボロボロな扉だ。何か叩きつけられるものがあれば簡単に壊れそうに見える。
『と言ってもなぁ……』
座敷牢には使えそうなものが見当たらない。手元に刀があれば何とかなったが、眠らされているうちに没収されたのか手元には無い。
『なんかないのかよ。見た感じ物置みたいになってるみたいだからなんか……』
端っこに置かれているダンボールの中をガサガサと漁る。舞い上がるホコリに咳き込みながら探しているとビニール傘が出てきた。
『とりあえずこれを使ってみるか……』
傘の骨の部分を纏めて留め具をカチッとはめる。
刀を持つように傘を構え、一呼吸置いてから勢いよく振り上げた。
『意外といけるもんだな』
へし折れた傘を放り投げ、真っ二つに割れた扉を押した。バタンッと大きな音をたてて扉が倒れたが、誰も駆けつけてくる気配は無い。
暗い廊下を壁伝いに歩き、地上に上がる階段を見つけた。
足を乗せるとぎしりと木が軋む。
ゆっくり上がっていき、木製の小さな戸を押す。そろりと外を窺って見るも人がいる感じはしなかった。
外へと出てみたが、しんと静まり返っている。
『血の……臭いか』
風に乗って鼻に届いたのは独特な臭い。仕事柄嗅ぎ慣れたものだ。近くで誰かが怪我したのか、それとも……。
「まだ残っていやがったか」
前方から出てきたのは見知らぬ男。手にはべっとりと血が付いた小刀を持っている。
「てめえで最後だ。大人しく死ねぇえぇぇえええ!」
小刀を振り上げて海へと走りよってくる。咄嗟に取り押さえようと身構えるが、ズキッと足に痛みが走って力が抜けてしまった。
『(まずい……!)』
眼前に迫る男に為す術なく海は固まる。このままでは刺される!というところで、男は何故かバタリとその場に倒れた。
海の足元へと飛んでまきたのは一本の木刀。
『銀……時……』
庭の方へと目を向けると、雨の中立ちすくんでいる銀時の姿が見えた。
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