第82幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ぺちぺちと頬を叩かれる。
もう少し、もう少し眠っていたいとその手から逃れるように顔を背ける。すると頭上から小さいため息が聞こえた。
「ええ加減起きろ。お前さんの家族とやらが迎えに来てんぞ」
『ん……中村……さん?』
「はぁ……ちょっと起きぃや」
微睡んでいる状態で身体を起こされるが、自力で立ち上がることも出来ない。中村の手から逃れることよりも眠気の方が勝ってしまっている。
「お前さんのツレがちょっと厄介でな。このまま逃げられたんじゃわしの計画が全部無駄になってしまう。悪いがお前には人質になってもらう」
縛られていた手足は自由となり、無理矢理腕を引っ張られて立ち上がらせられる。刹那、右足に痛みが走った。
『痛っ……』
「あ?なんもしてねぇだろ……ああ、あんた足怪我してんだっけか」
痛みで歩けない海に中村は舌打ちをして肩に担ぎ上げられた。
『銀時……呼んだのか』
お前さんのツレ、と中村は言った。となればここに呼ばれたのは銀時になる。事前に海は老人に万事屋の話をしていたから。
「ああ、おじきがな。あんたを蔵の中へ放り込んだ次の日にあいつらを呼んだよ。もう息子は居ねぇってのに呑気なやつらじゃ」
『なんで……』
「あ?」
『なんで教えてやらないんだよ』
「……教えるも何もねぇよ。若は俺が殺した。おじきが死ねば俺が組長になれる」
『あんたは……本当は……』
「お前には関係のない話だ。いいから黙って人質の役を担ってくれ」
ぽんっと海の腰を撫でて黙る。これ以上は語らないという無言の圧。暫く歩いたかと思えば、ゆっくりと降ろされる。
怪我をしている右足に負担がかからないように気を遣う姿は悪人には到底見えない。
中村は胸元から銃を取り出して海の頭へと押し付けた。
「なぁ、こいつがどうなってもいいのか?」
橋の真ん中で抵抗していた銀時が海を見て手を止めてしまった。
「海ッ!」
「大人しくしてくれればこいつに手は出さねぇよ」
「てめぇ!!海からその物騒なもんどかしやがれ!」
「あぁ、いいぜ?」
こめかみから離れた銃口は銀時へと向けられ引き金が引かれる。橋に血が垂れ、銀時は撃たれたところを押さえて唸った。
『銀時!!あんた……なにしてんのかわかってんのか!?』
ぐらりと銀時の身体が傾く。銀時に手を貸そうと一歩足を踏み込んだところで海は止まった。早く駆け寄りたいのに足が言うことを聞かない。
それを知ってか、銀時は苦笑いで首を横に振った。
『銀!!』
「海……」
橋にもたれかかるようにして倒れていく。海が銀時の元にたどり着いた時にはもう手が届かなかった。
『銀時!!』
「あとで……行く、から」
待ってて、と一言残して銀時は冷たい川の中へと落ちていった。
.