第82幕
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屋敷に来てからあの手この手を使って息子を蔵から出そうとしてみたが、中々に頑固なのか扉が開く様子は全く感じられない。
「なんで海さんがこんなところに……」
「あいつの性格だ。困ってる人間放っておけないタイプだから言われるがまま来ちまったんだろ」
「でも海もこん中入ってたら意味ないアル」
神楽の言う通りだ。出そうとしていたやつが逆に中に入ってしまうなんてシャレにならない。しかも海が蔵に入ってから一日経っている。迎えに来ていた土方を昨日追い返しており、真選組の局長から隊士を返すようにと連絡も来ている状態。
このままでは誘拐したと言われて捕まる恐れがある。
息子を出すのもそうだが、依頼人は海の事も蔵から早く出して欲しいと頭を下げたのだ。
海を返せと神楽が蔵を蹴り続けているのをボケっと眺める。これだけ騒がしくしているのだから海だって気づくはず。それなのに外に声をかけることすらしない。
なんなら自力で出てきてもおかしくないのに。
「あ、ダメじゃん。アイツ確か右足を──」
「おい、その辺にしとけ」
声をかけられて銀時はそちらへと振り返る。屋敷の縁側に座っている男は気だるそうに銀時たちを見ていた。
「誰だ?あれ」
「ウチの若頭、中村 京次郎じゃ。鬱蔵がまだ外にいる頃兄のように慕っていたやつよ。鬱蔵の事はこのわしより詳しい」
「おじき、いい大人が揃いも揃って子供にからかわれてりゃ世話ないのぅ」
「わしは息子と正面から向き合うと決めた」
「もう遅いさ。鬱蔵のことは放っておいたほうがいい。時が来れば自分から出てくるじゃろう。これ以上、鬱蔵を傷つけるな。それに中にいる男もすぐに出されるじゃろ」
いや、できることならあの扉ぶっ壊して今すぐにでも返してほしいくらいなんですけども。じゃないと大変なことになるよ?と言いたい。
「これまた言われんじゃねぇか。今回俺は後から知ったからね?最初から関わってたわけじゃないからね?」
海を振り回したと土方に怒られるのは慣れている。でも、今回は海が自分で巻き込まれに行ったのだ。その尻拭いを銀時たちが請け負っただけ。もし土方たちがここに乗り込んできたとしても怒られる筋合いはない。
また面倒なことになりそうだとため息をつこうとした銀時の後ろで依頼人がなにやら苦しそうに咳き込み始めた。胸を押えて蹲りながら咳を繰り返していると地面に鮮血が飛び散った。
周りが慌てる中、中村は冷静に依頼人を病院に連れていけと指示する。狼狽えていた強面集団は蜘蛛の子を散らすように駆け出していき、依頼人を運んで行った。
「銀さん!」
「お前たちは病院についていけ」
「銀ちゃんはどうするアルか?」
「俺か?俺は……」
親が倒れたというのに顔も出さない息子。そして息子を説得しているであろう海がいる蔵を見つめた。
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