第82幕
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真っ白い粉を運べ、なんて物騒な話にはならず、依頼人から蔵にこもっている息子を何とか外に連れ出して欲しいという切実な願い。
依頼人と共に息子がこもっているという蔵への前へ立つ。何年も手入れのされていない蔵は外装が剥げ落ちていてなんともみすぼらしい。
蔵の補修がいつまでも出来ないのは息子がかれこれ五年もこもっているからだった。だからここだけそのままの状態で放置されている。
中に人がいれば当然の事ながら改装工事なんか出来ないし、ましてやヤのつく人の息子が引きこもりのニートなんて笑われるだけだ。世間体を気にする者なら隠し通すだろう。
「おいおい、そりゃもう中でおっ死んでんじゃねぇの?」
「銀さんやめて!」
「いやこの五年、会ったことも話したこともないが、食事や欲しいものを書いた紙切れが毎日扉の隙間から出てくる。それに……」
「それに?」
「昨日、あんたら以外にも息子を出してもらうのを手伝ってもらおうと人を呼んだんじゃが、どうやらその人を蔵へと引きずり込んだみたいでな」
「え?俺たち以外に誰かにもう頼んでんのかよ」
「あぁ。町で噂になっている人じゃ。聞いた事ないか?とても優しく、頼りになると言われていた青年を頼ったんだが、今朝には蔵の前から居なくなっていた。こんな紙切れを残してな」
依頼人は懐から一枚の紙を取り出して銀時たちへと差し出す。紙を受け取って書いてある文字を読んでゲッと顔を歪める。左右から覗き込んできた神楽と新八も同じように眉をひそめた。
「おいおい……これじゃ誘拐みてぇじゃねぇか」
紙には一言、"帰さない"とだけ。
何を思ってこんなことを書いたのかは知らないが、これでは誘拐と同じだ。誰が中に連れていかれたのかはわからないが、ご愁傷さまとしか言いようがなかった。
「頼む。息子を早く蔵から出してくれないか。それに中に引きずり込まれた青年も外へ出さなければわしらが疑われる。もうこれ以上隠し通すのも出来ん」
「その青年ってだ誰だよ。そこらのガキじゃねぇのか?」
「いや、違う……」
渋い顔した依頼人は一度思い悩んでから口を開く。名前を聞いた瞬間、銀時たちはピシッと固まり互いに顔を見合わせた。まさかこんな所でその名を聞くと思っていなかったから。
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