第81幕
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「兄さん!リハビリも兼ねて見回りに行かない?」
朝食を食べているところに朔夜が目を輝かせながら声をかけてきた。口の中に物が入っているので、了承の意味を込めて小さく頷くと朔夜は嬉しそうに笑って食堂を出ていった。
その一連の流れを周りの隊士たちは微笑ましく眺めていた。
「すっかり隊士らしくなりましたね。朔夜のやつ」
『そうだな。この間の一件でへこたれるかと思ったけど大丈夫そうだな』
海の前に原田が座り、その横に山崎も腰を下ろす。二人は朔夜を見て嬉しそうに笑っていた。
「でも、補佐にべったりなのは変わりませんね。お兄さん大好きーってのが誰が見てもわかりますよ」
『注意してんだけどなこれでも』
「いや、補佐の注意は注意に入ってないんで」
『それはどういう意味だ原田』
ムッとしながら目の前の原田を軽く睨む。原田は隣に座る山崎に同意を求め、山崎も苦笑しながら頷く。
「だっていつも副長補佐が折れてるじゃないですか。あれはダメだ、これはダメだって言った後に朔夜がしょぼけると、大抵はやっちまった!って顔をして甘やかしてますよ?」
『そんなことは……』
無いと言いきれない自分がいて言葉を飲み込む。
「因みに朔夜くんだけじゃなくて、新八くんや神楽さんとか……あとは──」
『山崎、それ以上言ったらお前のミントンのラケットへし折るぞ』
「ご、ごめんなさいいいいい!!」
右手に持つ箸をバキッと折って山崎を睨む。凄まれた山崎はヒイッと情けない声を出しながら頭を何度も下げていた。
「……副長補佐、そんくらいの怒気で怒れば朔夜もやらなくなるんじゃねぇか?」
『泣くだろ。怖がられる方がめんどくさい』
「それ嫌われたくないだけなんじゃ──」
『何か言ったか?』
余計なことを言うなと原田に圧をかけると、降参しましたと両手を上げる。
『さて、見回りに行くか』
食事を終え、痛み止めの薬を口の中へ放り込んで水で一気に流し込む。空になった皿を片付けようと持ち上げると原田に止められた。
「俺が片付けとくんで。補佐は朔夜の所行ってやってください」
『いいのか?てか、お前らなんかやけに最近優しくないか?』
「そんなことありませんって。ほら、早く行かねぇと朔夜のやつがまた騒ぎますよ?」
『あ、あぁ……ありがとな、原田』
「どういたしまして」
持ち上げていた皿を机の上に戻し、原田に礼を行ってからその場を後にする。
ここ数日の間、やたらと隊士の対応が優しい気がする。
会議室の襖を開けて待っていてくれたり、車に乗ろうとするとドアを開けてくれたり。さっきもそうだ。朝食を受け取ろうとした海の横をすり抜けるようにしてお盆を受け取られ、自分が座るところまで運んでくれた。
『急にそんなことされたら気持ち悪くてかなわないな。理由は分かってはいるけど』
足を怪我してからだ。土方と総悟が海のことを気遣うように、隊士たちも何かと世話をしてくれるようになった。
足が動かしづらいというだけで、他は普通に動かせる。だから必要ないと言っても彼らは聞かない。
『……優しさがむず痒い』
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