第80幕
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「あらゆる神社、仏閣を訪ね、あらゆるまじない、念仏を唱えてもらってきたがついにこいつが身体から離れることは無かった。どうにもこいつの呪い、俺の体奥深くまでくいこんでるようだ」
互いに背を向けて団子を食べる中、土方が後ろで妖刀について話していた。
「おい、それより海の怪我の具合は……」
「またいつ何どき、こいつに食われちまうかわからねぇ」
「いや、だからお前の状態じゃなくて海は……」
「それじゃ真選組復帰は……」
「転職を考えた方が良さそうアルな。アニメイトにでも就職するアルか?」
銀時の言葉を遮るようにして神楽と新八が言葉を重ねる。そんな二人にイラッとしつつ、銀時は口を開いた。
「ったく……結構なことじゃねぇの?体から離れねぇ妖刀。まさしく剣身一体ってわけだ?てめぇにおあつらえの剣じゃねぇか」
団子を食べながら顔も見ずに言い放つ。隣で神楽が団子を詰まらせて俯きながら苦しそうに顔を歪めているのが目に入り呆れた顔で神楽の背中を撫でてやった。
「軽く言ってくれるぜ。世話んなったな」
「土方さん、どこ行くんですか?」
「決まってんだろう。俺の体はとうの昔に霊やら祟やらで定員オーバーさ。今まで踏み越えてきた敵や仲間たちの怨念でな」
土方は持っていた団子の串を放り捨てる。
顔を上げた時、ふわりと良い香りがした。この香りは知っている。
「今更呪いの一つや二つ増えたところで何も変わらねぇ。誰が死のうが振り返るつもりもねぇ。全部背負って前に進むだけだ。こんな俺でも待っててくれるやつがいんだからよ」
後ろへと顔を向けると、こちらへと軽く手を振る海の姿。まだぎこちない歩きかただが立てるようにはなったらしい。
「多串くん……その子はあげないって言ったでしょ?」
「知らねぇな。てめぇのもんになったからってなんだ?こいつは俺の部下だ。俺がこいつといるのは当然のことだろうが」
「はぁ……やっぱ返すんじゃなかった」
「海!!元気だったアルか!」
『神楽も新八も元気そうでなにより』
「怪我の方はもう大丈夫なんですか?」
『すっかり、と言いたいところだけどまだ右足が上手く動かせなくてな。リハビリ中』
「無理してんじゃないよまったく…」
『そういうお前は肩大丈夫なのかよ』
「すっかり治ってますー。なんなら海を抱いたまま家に帰れるくらいですけど?」
怪我をした方の肩を回せば、海は安心したように微笑む。
『そりゃよかったな』
「海」
『なに』
土方たちに聞こえぬように側に寄って耳元で話す。
「お前のあのクセは一体いつになったら直るの?」
『クセ?』
「覚えてないのかよ。俺がヘリから落ちた時にお前……なってただろ」
いつあの状態になっていたのかは分からない。銀時がヘリから落ちた時には既に海はなっていたから。
『ああ……それは無理だろ』
「そう簡単に諦めないで欲しいんだけど。見てるこっちがヒヤヒヤすんの分かってる?」
『悪いとは思ってる。でも……無理だ』
自分の両手を見て海は俯く。本人が一番悩んでいるのがよく分かる。でも、この癖だけはどうにかして直さなくては。じゃないと本当に海が死んでしまう。
「自分で止められないなら俺が止めるから。だから俺の側から離れるな」
顔を上げた海の目と銀時の目がかち合う。暫く見つめあっていたら、何故か海は顔を赤くして目を逸らした。
「なに?どうしたの?」
『なんでもない……お前さその……』
「うん?」
『な、なんでもない!』
「えっ、なによ。言いかけて止められたら気になるじゃん」
その後、どうしたんだと聞いても海は何も言わなかった。耳まで真っ赤にしていたから何か照れるようなことがあったのだろうけど、その何かは銀時には分からない。
「なに?なんでそんな真っ赤になってんの??」
『うるさい!気にするな!』
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