第80幕
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「伊東は俺が斬った」
『そうか。葬式も終わらせたのか?』
「あぁ。怪我が治り次第、あいつの墓の場所教える」
『今教えろよ』
「ダメだ。今は怪我を治すことに専念しろ」
伊東が起こした暴動から数日。海は屯所の自室に寝かされていた。
怪我と睡眠不足、そして出血多量で倒れ病院へと運ばれた。打撲などの怪我は問題ないとされたが、右足の怪我は状態が悪く完治するのに数ヶ月掛かると医者に言われた。
病院には他の隊士たちも搬送されており、海に構ってる余裕などほぼ無い。そんな状態で入院しているのも申し訳なく感じて勝手に退院してきた。
今は痛み止めが効いているから普通にしていられる。薬が切れたらまたあの耐え難い激痛が襲ってくるけど。
「怪我の具合はどうだ?」
『痛み止めが効いてるから今はなんともない。俺の事より他の奴らの心配をしてやれよ。山崎は大丈夫なのか?』
「お前ほどは悪くない。一応入院はしてるが、すぐに出てこられるだろ」
『そう。それならいい』
「良くねぇ。てめぇ、自分の状態分かってんのか。人の心配よりてめぇの心配をしろ。下手したら……歩けなくなってたんだぞ」
『盗み聞きとはいただけないな』
「お前が言えたギリか?」
伊東と土方の話を立ち聞きしていたことをまだ覚えていたのか。その時のことを持ってこられた海は言い返す言葉もなく苦笑い。
「海、お前に聞きたいことがある」
背筋を伸ばして神妙な顔つきで土方は問いかける。
『なんだよ』
「……もう俺の下は嫌か?」
表情には出さないが、目が不安で揺れている。断られることを恐れているのだろう。そんなことするはずも無いのに。
『必要なのであれば戻る。要らないならこのまま平隊士のままでも構わない』
今回の一件で己の不甲斐なさが身に染みた。こうなる事は予見できたのに動くのが遅すぎた。そのせいで隊士たちの大半は怪我をしたし、近藤のことを危険に晒してしまったのだ。
真選組を守ることが出来なかった罪は大きい。
『俺を戻すのはよく考えてからにしてくれ。今回の件で分かっただろ?俺はこうなる事を予測できたのに阻止できなかった。そのせいで真選組は甚大な被害を被った』
だから自分を補佐に戻すのは止めといた方がいい。そう続けて言うと、土方は頭を抱えて俯いた。
「それなら俺はどうなるんだ。妖刀の影響とはいえ何度も局中法度を破り副長の座も首になった。お前が一人で動いてた間俺は……」
『しょうがないだろ。どうしようもなかったんだから。これからは変なもんに手を出さないように気をつけろ』
勝手に人の物を持ち出すなと注意すれば、土方は肩を揺らして笑う。
「お前は俺の母親か」
『ふざけんな。こんなマヨネーズ塗れの息子を持った覚えは無い』
「マヨネーズをバカにするなよマヨネーズを」
『マヨネーズをバカにしたんじゃなくて、マヨネーズに塗れてるお前をバカにしたんだが』
俯いていた顔がゆっくりと持ち上がる。見えた瞳は少し濡れていて、土方は袖で乱暴に拭った。
「副長命令だ。桜樹海、副長補佐に戻るように」
『仰せのままに』
こくりと頷く海に土方は安心した顔で微笑む。
「暫くは安静にしてろ。治ったら仕事してもらうからな」
『書類くらいならできないことも無いけど』
「安静にしてろって言っただろうが!!」
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