第79幕
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「ど、どうしよう……!これじゃ僕達──」
『今の……音はなんだ』
「海さん!!!」
大きな音で目が覚める。海たちは未だに列車の中にいた。気絶していた海を新八が背負ってくれたらしい。
前方へと目を向ければ、神楽と朔夜が浪士の相手をしているのが見えた。二人とも肩で息をしていて、長く浪士たちと対峙していたのがわかる。
「海さん!大丈夫ですか!?」
『悪い……苦労かけた』
「気にしないでください!列車から出るので、それまで耐えられますか!?」
『何とかする……』
海の右足に負担が掛からないように新八は支えてくれている。子供にこんなにも気を遣わせているのに痛みが酷くて頑張れないなんて言えないだろう。
必死に表情を殺して新八に大丈夫だと伝え、列車を出るべく歩き出す。
そんな中、外から聞き覚えのある音がこちらへと向かって来ているのに気づいた。もしかして救助ヘリが来たのかと期待したが、それは武装されたヘリ。しかもその銃口は海たちを狙っている。
『……かた……土方ァァァァ!!!』
「っ!?……なっ、伏せろ!!!」
声を振り絞って土方に危機が迫っていることをを知らせる。ガトリング砲を向けられていることに気づいた土方は声を張り上げて周りに注意し、近藤の元へと駆け寄った。
もして撃ち込まれる無数の弾丸。自分を背負っていた新八を床に倒しつつ、前にいる朔夜たちの方を見やる。
『向こうは大丈夫そうだな……い゙ッ!』
足のことなど考えもせずに新八を庇ったため、遅れて痛みが襲ってくる。そのまま動けないでいた海に新八は顔を青ざめた。
「す、すみません!僕のせいで……!」
『大丈夫だから。それより怪我は?』
「海さんが庇ってくれたので大丈夫です!」
『それならいい』
弾丸の雨はすぐに止まった。きっと次弾を装填しているのかもしれない。その間に列車から下りなければ。そう思って顔を上げた先に見えたもの。
口から血を吐き、全身から大量の血を流しながら近藤と土方を庇うようにして伊東は立っていた。
『伊東……おい……伊東!!』
伊東は崩れ落ちるように地面に膝をついて倒れる。その瞬間、彼は少しホッとした顔を浮かべてるように見えた。
伊東の表情を見た途端、海の中で何かがぷつりと切れる。腹の奥から湧き上がってくる怒りは抑えられない。
「海さん?えっ、ど、どこ行くんですか!?」
ゆらりと立ち上がると新八は驚愕して海の腕を掴む。その手を振り払い、落ちていた刀を拾い上げた。
「てめぇ、その体でどこ行くつもりだ!」
新八の声で土方がこちらに気づき声をかけてくる。ヘリはまだ近くにいて、またいつ撃たれるか分からない状況で動くなと制止されるが、海は黙って前方へと歩き出す。
「海!止まれって言ってんのが分かんねぇのか!」
『騒がしい。ここから抜け出すにはアレを片付けるしかないだろ。そうすれば全員出られる』
「お前一人でどうにかなるようなもんじゃねぇ!足を怪我してんの忘れてんのかてめぇは!」
土方に肩を掴まれて無理矢理止められる。その手が煩わしくて、刀の切っ先を土方の首元へと突きつけた。
「なっ……」
『離せ。邪魔をするな』
手から力が抜けたのを感じ、海はそのまま歩き出す。もう誰も止めるものはいなかった。
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