第79幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『いっ……!』
列車が大きく揺れたかと思ったら海達が乗っている車両に爆風が押し寄せた。突然のことに受身など取れる訳もなく吹き飛ばされる。
「海さん!大丈夫ですか!?」
「海しっかりするネ!」
新八と神楽は無事だったらしく、元気そうな声にホッと安堵した。海の上に乗っていた瓦礫は二人の手によって退かされ、新八の手を借りて立ち上がる。
右足体重を乗せた途端、鋭い痛みが走って膝から崩れ落ちた。
「海さん!?」
『おいおい……嘘だろ……!』
恐る恐る右足の方へと目を向けると、ふくらはぎにガラスの破片が刺さっているのが見えた。爆破された衝撃で列車の窓が割れて飛び散ったのだろう。それが運悪く海の足に突き刺さった。
このままでは歩くことも出来ない。ガラスの破片に手を伸ばして抜き取ろうとしたが、新八に手を掴まれて止められる。
「ここで抜いたら血が沢山でちゃいますよ!」
『でも、抜かねぇと歩けねぇだろ……』
「私が海のことおんぶするアル!」
『気持ちだけ受け取っておく』
新八に背負われるならまだしも、神楽におんぶされるのは少し嫌だ。この状況でわがままなど言っていられないのは分かっているが、プライドが許さなかった。
どうしたものかと考えていると、前の車両から聞こえた悲鳴。その声に反応して神楽と新八が慌てて見に行った。
「海さん!メガネかけた人が!」
『伊東か!新八、神楽、頼む。あいつを助けてやってくれ!』
「でも、あいつ……」
『分かってる。それでもだ』
神楽が渋る気持ちもわかる。この状況を作り出したのは伊東だから。それでも頼むと声をかければ二人は顔を見合せて頷き伊東の元へと走っていった。
『あとはこれをどうするかだな』
突き刺さるガラスをみてゴクリと喉を鳴らす。
新八と神楽は伊東の救助に向かった。その僅かな時間で、このガラスを足から抜かなければ。
『抜いたらすぐに止血しねぇと……』
破れかかっていたズボンを引き裂いて包帯代わりに。あとは引き抜く覚悟だ。
恐怖で荒くなる呼吸を落ち着かせようと何度も深呼吸を繰り返す。痛みを最小限に抑えるには一度で引き抜かねばならない。少しでも躊躇ったら激痛で引き抜けなくなってしまう。
『……大丈夫だ。これくらい大したことない。今までこれ以上の怪我をしてきただろうが』
覚悟を決めてガラスへと手を伸ばす。
奥歯を噛み締めて息を止める。
『っぐうあぁぁぁぁ!!!』
ガラスを一気に引き抜いて放り投げる。瞬間、のたうち回るほどの激痛が右足を襲う。早く止血しなくてはいけないのに手が思うように動かせない。
「お、おい!海!」
伊東を無事助けた近藤たちが海の声を聞きつけてこちらへと走りよってくる。新八と神楽が近藤らに怪我のことを伝えてくれたのか、近藤と土方は即座に海の怪我の手当てをしてくれた。
「トシ!止血するから海を押さえてくれ!」
「わかった!」
土方に後ろから抱き込まれるようにして動きを封じられ、その間に近藤が自分のスカーフを取って海の足を縛り上げる。
『っぐ……あっぐ……!』
「耐えろ……少しだけだから耐えろ!」
土方の腕を強く掴みながら痛みに悶える。右足がどうなっているかなんてもう分からない。
「近藤さん、海さんは大丈夫なんですか!?」
「出血が酷いな……すぐに病院に連れていきたいが今の状況じゃ難しいだろう」
「そんな……!」
『大丈夫……たぶん、だいじょう、ぶ』
「おい海!しっかりしろ!」
ぐったりと土方に寄りかかりながらうわ言のように呟く。痛みと疲れでもはや意識を保っているのも厳しい。
「海!」
『すこし……ねかせて』
必死に名前を呼ばれているのはわかる。土方が泣きそうな顔をしているのも。それでも身体は休息を欲していて強い眠気に抗えなかった。
.