第78幕
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「そういえば海さん、あなたなんでそんなボロボロなんですか」
『それ今聞くか』
聞かずとも察しているものだと思っていたのだが、どうやら総悟は分かっていなかったらしい。
「部屋にいると思ったら居なくなってるし、朔夜に聞いても分からないって首を横に振るだけだし」
『口止めしたからな』
「口止めってなんですか」
『そのまんまの意味だ。朔夜に何も言うなと言った』
「何でそんなことを?」
『面倒なことになるから』
部屋に伊東が来た時、朔夜も共に連れてきていた。反抗的な海を抑えるために人質として連れてきていたのだろう。
そのあとは大人しく伊東たちについて行ったから朔夜はすぐに解放されたのだが、他の奴らに余計なことを言うなと海は言った。
普通は伊東が朔夜に言うことなのだろうけども。
『近藤さんの耳にでも入ったら厄介なことになる。こういうのは穏便に済ませるべきだったんだが……』
「伊東が近藤さんを暗殺しようと思っていなければ、ですよね」
『土方が邪魔だから追い出したくらいだったらまだ何とかなったんだよ。まさか真選組自体を乗っ取ろうとしているとはな。そこまでの事をするのであれば、こちらはそれ相応の対処しなくちゃならねぇよ』
裏切りとあれば切腹は確実だろう。だがもう本人を説得する暇は無い。
それに彼は借りてはいけない手を借りてしまったのだから。
『どうやって懐柔したのやら。うちに持ってきた武器は全部あいつから流されたものだったのか』
すぐ側を走っているパトカーと浪士の姿。こんな所で見かけるとは思わなかった者たちだ。
『(晋助が関わってるのは確実か。まさか内側から瓦解させようだなんて)』
ちらほらと見えるのは晋助が集めたであろう鬼兵隊の人間。そしてその中に見知った顔が一人。ずきりと背中の古傷が痛んだ。
『総悟、ここ頼めるか?ある程度は片付けたから大丈夫だとは思うが』
列車の中に残る隊士はもう数人くらいだ。そいつらも戦意喪失して手を上げている状態。車内はほぼ鎮圧したと言っても過言では無い。
「何言ってるんですか。そんな状態でどこ行く気なんです」
『ちょっと野暮用。直ぐに戻る。総悟は近藤さんと朔夜の方を見てきてくれ』
「それなら海さんも一緒に──」
『総悟』
総悟の言葉を遮るように名前を呼ぶ。
『近藤さんを頼む』
「……必ず戻ってくるんですよね」
『戻る。だからそんな顔すんなよ』
今にも泣き出しそうな顔をする総悟を安心させるように頭を撫でる。
「ちゃんと戻ってきてくださいよ」
『了解』
開いていた窓から身を乗り出し、すぐ側を走っていた原田に声を掛ける。パトカーを寄せてもらって車体に飛び乗った。
『原田!あの車を追いかけてくれ!』
「ガッテン承知!!!」
「副長補佐!!怪我大丈夫なんですか!?」
『気にするほどでもない。それよりあの車両を止めて──』
晋助の仲間が乗っている車両を指さした時に見えた人物に目が点になる。そいつは海と同じように車の上に乗って刀を引き抜こうとしていた。
『土方……?あいつこんなところで何して……』
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