第78幕
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「海!総悟!!」
「兄さん!!」
閉じられた扉に駆け寄ってきた二人は扉を強く叩いて開けるように叫ぶ。
だが、海も総悟もここを開ける気はさらさらなかった。
「俺一人で十分ですけど」
『そう言うなって。付き合わせろ』
「でもそんな身体で大丈夫なんですかい?」
『いいんだよ。これくらいのハンデは必要だろ?』
「ハンデ、ですか」
気を遣う必要は無いのは分かっている。でも、この状態で相手をするのもいいだろう。散々拷問を加えといた相手に倒される屈辱は耐え難いものだ。
『やられたら倍返し?そんな甘っちょろい考えはねぇよ』
あの場で殺さなかったことを後悔するほどの苦痛を与えるとしよう。近藤に刃を向けたことの罪の重さも彼らに味わわせねば。
「まだ生きていたんですか」
中間車両まで歩いていくとそこには伊東が待ち構えていた。その周りには手駒にした隊士たち。
『意外としぶといもんだろ?』
「ええ。死んだとばかり思ってましたよ。あれだけの拷問を耐え抜いた貴方には称賛の意を向けたくなるくらいには」
『あれで拷問と言ってたんじゃ先が不安だな。学び直した方がいいぞ。拷問ってのは相手の口を割らせるための方法だ。ただ単に痛めつけるだけの行為じゃない』
「拷問を受けていた者に諭されるとは……」
『しょうがねぇよ。やった事がないならああなるもんだ。次があったら……いやもう無いな』
伊東に次は無い。もう彼は真選組の、近藤の仲間では無いから。
「君はここまでだ。その身体ではこの人数を相手になど出来まい」
ぞろぞろと集まってくる隊士に海は笑みを浮かべる。
『見くびられたもんだな。これくらい大したことないだろ』
向かってくる隊士を一人、また一人と斬り伏せる。
列車の窓に血飛沫が掛かるのを見たとき、外で走っているパトカーが見えた。ちらりと見えた車内には見慣れた髪色が乗っている。
『いつの間にあいつらに連絡取ってたんだよ』
「海さんの携帯が落ちてたんでそこから掛けやした」
『勝手なことを』
「それは海さんも同じでは?」
『しょうがないだろ。どっかのバカが妖刀なんてもんに手を出すから』
大人しく自分の刀が直るまで待っていれば良かったのに。変に訳の分からない刀を借りてくるからこうなるのだ。
『戻ったら文句の一つや二つは聞いてもらわねぇとな』
「それくらいで済むんで?」
『なんだ?殴り倒してもいいのか?』
襲ってくる隊士を返り討ちにしながらへらりと笑う。周りは血塗れで、足元には隊士の死体が転がっているというのに海と総悟の会話はいつもと変わらず穏やかだ。
『それにしても腹減ったな』
ぐうっと鳴ったお腹を擦りながら海はひたすら目の前の敵を倒し続けた。
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