第78幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガタンと床が揺れた衝撃で目が覚める。うっすらと目を開けるとそこは見知らぬ場所。床に横たわっている身体を起こそうと力を入れると鈍い痛みが全身を襲いまた床へと倒れ込んだ。
丸一日と言っていいほど殴られ続けた身体はどこも痛みを訴えている。口の中には血が溜まっていて気持ちが悪い。ぺっと床に血を吐き出して再度周りを見渡す。
『……近藤さんのことを追っかけたんだっけか』
伊東の計画を知って慌てて近藤の後を追いかけた。拷問を受けていた身体を動かすのには苦労したが、やっとの思いで列車に飛び乗ることに成功した。そのあとは気絶して今に至るが。
ゆっくりと身体を起こすと全身が痛む。だが、完全に動けないほどでは無い。蹴られ殴られの繰り返しだったが、どうやら骨が折れているなどの怪我はないようだ。
『拷問するなら徹底的にやらないとダメだろ。普通足から潰すはずなんだけどな』
逃げられないように足の腱を切る。そうすれば歩くことは出来なくなるからだ。それから様々な拷問をしていくのだが、海を拷問していた隊士たちは不慣れだったのかただ、殴ることしかしなかった。
意識すれば急所を外せるからそこまで酷くは無い。無駄に痣は増えてしまったけれど。
『さて、まずは近藤さんと合流するか。総悟と朔夜も一緒に居るだろ』
総悟が何かを企んでいたのは知っている。伊東の味方の振りをしつつ土方を屯所から追い出したことも分かった。
とは言っても総悟のことだから本気で土方のことを追放したのかもしれないが。
貨物列車から出て客席の方へと移る。前に進むに連れて騒がしくなってきた。
『あれは……』
進んだ先の車両にいたのは近藤と総悟、そして朔夜の姿もある。
近藤は俯いて申し訳なさそうに総悟に謝っていた。
「すまねぇ、総悟。こんなことになったのは全て俺一人のせいだ」
三人に気づかれないように気配を消して近づく。
「なんて詫びればいい?俺はお前らに……トシになんて詫びればいい」
『詫びなんて必要ないだろ』
はっと顔を上げた近藤は今にも泣きそうな顔をしていた。そんな彼に笑いかける。
「海……お前……!」
『詫びを貰うくらいなら休みが欲しいんだけど。どうせこれが済んだら始末書やらなんならを書かされるんだ。その分の休みはもらえるんだよな?』
暫く休暇が欲しい。大きな怪我はないとはいえ、痣が治るまでの間は何もしたくないから。
「海、その怪我はまさか伊東先生に──」
『いや、転んだ。最近つまづくことが多くてな。これでも気をつけてるんだけど』
拷問を受けていたことは近藤は知らなくていい。どうせ気づいてしまうだろうけど、今はそんな無駄な話は必要ない。
近藤の前を通り抜け、朔夜の腰にある刀へと手を伸ばす。不思議そうに海を見ている朔夜の肩を押して近藤の方へ預け、総悟へと視線を送る。
「いいんですかい」
無言で頷けば、総悟は躊躇いなく扉の鍵を閉めた。
.