第76幕
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土方を連れて新八と神楽は以前知り合った鉄子の鍛冶屋へと来ていた。
鉄子はゆっくりと鞘から刀身を抜くと目を大きく見開いて驚く。
「間違いない。村麻紗だ」
「村麻紗?」
「室町時代の刀匠、千子村麻紗によって打たれた名刀だ。その切れ味もさることながら、人の魂を食らう妖刀としても知られている」
「妖刀!?ホントに妖刀でござるか!?中から美少女が出てきたりするでござるか!?」
「いや……あの……」
「ちょっと土方さん!落ち着いてくださいよ」
二次元オタクが喜びそうなワードだなと思っていたら、新八の予想のまま土方は食いつく。土方は鉄子に飛びかかろうと手を伸ばしたところで止まった。
「なにやってんのお前は」
「銀さん!」
土方の襟を掴んで鉄子から引き離し、興奮冷めやらぬ状態の彼を踵で踏みつける。
「銀ちゃん海に会えたアルカ」
「いや、忙しいってよ」
「会えなかったんですか?」
「会えなかったつーか、アイツらもよく分かってないっつーか」
意味がわからない。銀時は海に会いに行ったはずだ。銀時が会えなかったのは仕方ないと思うが、屯所にいる人たちもよく分かっていないというのはどういう意味なのか。
「この刀、本当に妖刀なの?」
「ああ、でも贋作も多い刀だ。たとえ本物だとしても、こいつがその伝説の代物だという可能性はさらに低いだろう。だが、こいつが正真正銘、本物の妖刀村麻紗なら……もはやその男に本来の魂は残っていないかもしれない」
「そんな……じゃあ、土方さんはこのままなんですか!?」
このままでは副長には戻れない。そうなったら海の忙しさは増すばかりだ。
どうする?と銀時に問いかけても彼は眉間に皺を寄せて考え込むばかり。
「銀さん、これじゃ土方さんのこと──」
助けられない。そう言おうとした瞬間、タバコの臭いがして後ろを振り返った。
「お前ひょっとして……」
「やれやれ。最後の一本吸いに来たら目の前にいるのがよりによっててめぇらたぁ俺もヤキがまわったもんだ。まぁいい、これで最後だワラだろうがなんだろうが縋ってやらぁ。いいか?てめぇらに最初で最後の頼みがある」
揺らいでいる瞳は必死に意識を繋いでいる表れなのだろう。気を抜いたらすぐにあのオタクへと戻ってしまうのを耐えて自我を保っている。そんな彼がゆっくりと頭を下げた。
「頼む。真選組を……俺の……俺たちの真選組を……守ってくれ。俺は……あいつを泣かしちまったんだ……あいつが俺を庇って……頭下げたっつうのに……俺は、なにも……」
「おい……あいつって……」
悔しげに話す土方に銀時が話しかけるも彼の人格はタバコの煙と共に掻き消えた。その場に残されたのは灰とオタクの土方。
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