第76幕
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携帯をパタンっと閉じて電話を切る。伝えたいことは伝わったはずだ。あとは銀時たちに任せるしかない。
本来であれば自分で調べるはずだったものが出来なくなってしまった。副長補佐の任が解かれれば自由に動けるだろうと。邪魔者が消えたのだから監視の目も緩くなると思っていたのに。どうやらその考えは甘かったらしい。
"副長補佐"が重要だったんじゃない。伊東は自分に歯向かうであろう人間の排除をしていたんだ。
「何をしているんです?」
銀時との電話中に部屋に入ってきたのは伊東とその部下。屯所内、しかも丸腰の人間相手に抜刀してくるとは思わなんだ。伊東が部屋に入ってきたことに驚いて無言になってしまい、きっと銀時の方に刀の抜く音が聞こえてしまっただろう。
電話越しに聞こえた銀時の声はとても心配そうにしていた。そこから矢継ぎ早に土方のことを頼んでしまったから不思議がっているはず。
変に思ったから、と言って屯所に来なければいいが。今ここに来るのは良くない。
『ここまで監視される謂れは無いはずだが?補佐の役を下りたんだからそっちの仕事は何も手を出してないだろ。部屋にまで来て……しかも刀を抜く理由はなんだ』
「あなたにはまだ容疑がかかっているんですよ」
『容疑ねぇ』
補佐から下りてすぐに伊東に向けられた切っ先。それは外部への内部情報の漏洩。
まさかそんな罪を被せられるとは思っていなかった。とはいえ、以前から色々と調べ物をしていたから疑われても仕方ないと言えば仕方ない。だが、これに関しては近藤と松平から許可を得ている。しかも、調べている先が自宅に当たる場所なのだから文句を言われる筋合いはない。
「外部の物に内部情報を漏らすことは局中法度で禁じられているのは知っていますね?」
『何度も言っているが、それはお前の勘違いだと言ってるだろ。近藤さんと松平のおっさんに確認を取ればいい。両者からはきちんと許可を得て動いてる』
「ならば隠す必要などないのでは?調査資料は全て開示するべきだろう」
『真選組とは何ら関係のない話だ。開示したところでお前らには分からない』
「それは見てみないことには分からないことだ。君がそこまで隠すのには理由があるんだろう?」
『身内の恥を晒すような趣味は無い。何を言われようとお前らに見せる気はない』
やたらしつこく聞いてくる伊東にため息が出てくる。彼らが求むものなど何も無いのだ。
海が調べているのは天人に売り飛ばされた被害者たちの行方。それがリスト化されて西ノ宮邸の金庫に保管されている。
その中身を得るために金庫の番号を探しているというだけの話。それを何度説明しても伊東は頑なに情報を開示しろの一点張りで聞く耳を持たない。近藤と松平に聞けばすぐ分かることなのに伊東は海から直接聞き出そうと躍起になっている。
副長が抜けた今、伊東は鼻を高くして屯所を歩いている。土方を出し抜いたと思っているのだろうが、それは大きな間違いだ。
「君は分かっていないようだな。そうやって隠し通そうとすればするほど怪しさが増すというのを。口を割らないというのならこちらも考えはある」
この手は使いたくはなかったが、と言いながら伊東は障子を開ける。その先には伊東の部下たちと朔夜が立っていた。
「素直に話してくれるかい桜樹くん」
『お前のことが苦手な理由がよく分かった気がするわ』
何も分からないであろう朔夜は困惑の色で海と伊東を見つめる。背後に立っている奴に刃を突きつけられているとも知らずに。
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