第76幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「銀さん、これ……」
「あ?」
新八が紙切れを拾って銀時に差し出す。どうやら土方が荷物を漁っていた時に落ちたものらしく何か書かれているらしい。
「これは……」
「これ多分……海さんじゃないですかね」
紙に書いてある文字は確かに海のものだ。
"ご迷惑をお掛けしてすみません。彼が起こした不始末についてはこちらで面倒をみますので、何かありましたらここへ連絡をください"
という文章と共に電話番号が書かれていた。
「銀さん……」
「掛けてみるか」
この電話番号はきっと海の携帯に直接繋がる番号なのだろう。
固定電話のダイヤルを回して受話器を耳に押し当てる。三コール目が終わるところで海が電話に出た。
"もしもし"
「もしもし?あ、俺だけど?」
"あの……え?"
「俺だっつの」
「銀さん!それじゃオレオレ詐欺と変わりませんよ!」
"銀時?"
「おう。ちょっと聞きてぇことがあっから電話かけたんだけどよ」
少し間が空いてからため息が聞こえた。
"お前に迷惑かけたのか。あいつ"
かったるそうに言う海に思わず苦笑いが漏れ出る。相変わらず彼は上司に振り回されているようだ。
「いや、かける手前らへん?てかさ、お前なにやってんの?今」
"仕事で今は手が離せない"
「なに?そんなに忙しいの?そんな状態なのにこいつ外でフラフラさせてんの?」
"今そいつちょっとおかしいんだわ"
「ちょっとどころじゃないけどね。テレビで新八と揉み合ってたけど」
"揉み合ってた?"
「いやなんでもない。電話じゃよく分かんねぇから会いたいんだけど」
"銀時、悪い今俺屯所出られない"
「なにそれどういうことよ」
何か変な感じがする。周りに聞こえないようにコソコソと話しているような。
「……何があった」
"事情は話せない。そこにいる奴の状態を端的に言う。どうやら背負ってる刀が妖刀らしく、それが悪さをしているみたいなんだ。こっちで調べようと思ったけど──"
そこで海は口を閉ざした。声が聞こえなくなったと同時に別の物音が聞こえて背筋が凍った。
「海、お前今の……」
"気にするな。少し……厄介事になっただけ。銀、悪いそっちのこと頼む"
それだけ言ってプツリと切れた電話。
切れる間際に確かに聞こえた刀の音。そしてどこか怯えの混じった海の声に指先が冷たくなっていく。
「(今度は何に巻き込まれたんだ)」
屯所の中から出られないと言っていた。それなら一応は安全なはず。なのに海は銀時に縋るような声色を出していた。
真選組内部で何かが起きている。海ですらどうにも出来ないようなことが。
「銀さん?海さんなんて言ってたんですか?」
「妖刀がどうのこうのって……」
土方の方を見やれば、確かに彼は刀を背負っている。見た目はただの刀なのにあれが妖刀だなんて。
そんなことよりも今は屯所に行って海の安否を知りたい。土方がこんな状態なら中に入るのは簡単なはずだ。
「新八、そいつを鍛冶屋に連れて行ってくれ。俺は屯所に行ってくっから」
「海さんに会いに行くんですか?」
「ああ。上司を放ったらかしでなにやってんだか」
土方のことを新八と神楽に任せ、銀時は屯所へと向かう。この胸騒ぎが勘違いならばいい。もしそうでなかったら。
「海……!」
.