第76幕
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「お前、真選組辞めたって言ったけどよ。海はどうしたんだよ」
「海氏?海氏は今、仕事中でいないでござる」
「そうじゃねぇよ。海はお前が辞めることに何も言わなかったのかって言ってんだよ」
あの世話焼きが何も言わずに出すわけが無い。どう考えたって今の土方はおかしい。
「海氏には何も言われなかったでござる」
「何もって……あいつはお前が辞めたこと知ってんだろ?なら、何かしら言うだろうが!」
「ちょっと銀さん!土方さん、本当に海さん何も言わなかったんですか?」
「言わなかったでござる。辞めた後にゆっくり休んでとは言われたけど、それ以外は何も」
「ゆっくり休んでって……どういう意味だろう」
心配そうな表情の新八に銀時は眉をしかめる。
土方がちゃんと話を聞いてこなかったのか、それとも本当に海は何も言わずに土方を外に出したのか。これは本人に直接聞かないと分からない。
「他には何も言わなかったのか」
銀時の問いに土方は腕を組んで思い出そうとする。暫くの沈黙のあとぼそりと呟いた。
「悲しそうだったでござる」
「悲しそう?」
「勇者がヒロインを置いて単身、魔王に挑む時の顔でござる」
「いや、意味わかんねぇよ!日本語で喋って!?」
「何を言ってるでござるか坂田氏。勇者がヒロインを安全な村に置いていくシーンでござる。魔王と戦うのは自分だけでいい、傷つくのは自分だけでいいと無理矢理笑う勇者のようだった。海氏は演劇が向いてるかもしれない」
誇らしげに言う土方にこめかみがピクリと動く。言っていることはよく分からないが何となく察した。また海は面倒事に巻き込まれていると。
「お前、そんな海を置いて屯所一人で出たのかよ」
「え?だって出ていけって言われたから出てきたでござる」
「出ていけって言われたから何も考えずに出てきたって?」
「さ、坂田氏?何怒ってるでござるか?」
「お前さ……ほんとにムカつくわ」
「銀さん!今の土方さん何かおかしいですよ!」
「おかしいのは知ってんだよ。でもなぁッ!」
能天気にしている土方を殴りつけようと立ち上がったが、神楽と新八に止められて不発に終わる。
「(あいつは……一体何をやってるんだ……)」
止めてくれる人間がそばに居ない。これでは確実に海は無理をする。
誰でもいいから海を止めて欲しい。そう切に願った。
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