第74幕
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「ところで桜樹くん。君はいつから隊長格の制服に身を通すようになったんだい?」
近藤と話していたはずの伊東の意識がこちらへと向く。ずっとそっちで話をしていれば良かったものを。
伊東との接点をあまり増やしたくは無いが、相手から声をかけられたのであれば仕方ない。
『ここ最近のことですよ』
「君は確か平隊士の方が良いと言っていたね。それが今では副長補佐とは。どんな心変わりだい?」
『別にそんな大した理由じゃないですよ。ただ……』
ちらりと土方の方を見やると、向こうも海のことを見ていた。
『肩書きがあればやれることが増える、そう思っただけです』
近藤と土方の手伝いをするとなれば平隊士の名前では心許ない。副長補佐となれば、副長と同等とまではいかないがある程度の力が身につく。外で動くのも内で動くのも楽になる役職だ。利用しない手はないだろう。
「そうだったのか。だが、君に合う役職だと思うよ。君は剣の才も文の才もあるからね」
『何をおっしゃいますか。伊東さんには敵いませんよ』
「謙遜はいい。君には期待しているんだ……この真選組を支えていく仲間としてね」
『……知るかそんなもん』
「何か言ったかな?」
『いえ、なんでもありません』
訝しげな表情を浮かべる伊東に軽く微笑む。
一々この男は鼻につく言い方をする。その度に変な気持ち悪さを感じてしょうがない。
伊東の興味はまた近藤の方へと戻り、漸く解放されたかと一息ついた。
「海さんって敬語使えたんですね」
『なんだその言い方は。人のことなんだと思ってんだお前は』
「相手が年上でも上司でも気にせずマイペースな人なのかと」
「兄さん、町の人たちには敬語だよ?あとたまに近藤さんにも」
「それは外だからだろ。海さんがウチで使うのはよっぽどの事がない限り無いじゃないですか」
『まあ……そんなに使うことは無いな』
局長の近藤にすらほとんど使わない。近藤に敬語を使おうものなら止められるくらいだ。局長と隊士というより、友人同士だからというのがあるのかもしれないが。
「伊東先生にはなんで敬語を?」
『さあな。知らね』
「なんですかそれ」
『別に意識したつもりはない。普通に出てきた』
伊東と気楽に会話をするつもりは無い。そもそもできる気がしないのだ。会話を。
『(過去に何かあったっていう訳じゃないんだけどな。なんでか伊東だけは苦手なんだよな)』
勘がそう告げている。あまり彼と関わるなと。
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