第74幕
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「伊東 鴨太郎君の帰陣を祝して乾杯!」
近藤の声でみな一斉にお猪口を持つ手を上げ、そして好きなように飲み食いを始めていく。
浪士に襲われた土方と海は伊東のおかげであの場を切り抜けられたのだと後々知らされた。意識を失っていた海を屯所まで運んだのも。
あのまま土方も浪士たちに暴行されていたらどうなっていたことか。
屯所に戻ってきてから土方とは一言も話していない。大丈夫だったのかと声を掛けようとしたが避けられてしまっている。暫くは声をかけない方が良さそうだ。
向こうもそうしてほしいのか、海と目も合わせようとすらしないから。
「海さん、朔夜がこれ食えないって言ってるんですけど」
『おい、好き嫌いしないで食べろ』
「だそうですけど」
「僕、茶碗蒸しあまり好きじゃないみたい……」
『好きじゃないみたいだ?』
最近、色々なものを食べさせるようになってからというものの、好きなものと嫌いなものがハッキリしてきた。
野菜、魚、肉などはしっかり食べるが、たまにこうやって苦手なものが出てくる。この間は確か湯葉が食べれないと言っていたか。
『柔らかいものが苦手か?』
「え?ううん、違うと思う。なんか……食べれなくは無いけど……」
『好き好んで食べたくはないと』
「ううーん……」
茶碗蒸しを見て困った顔をする朔夜に総悟は何故かニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべ、海は小さく嘆息を漏らす。
『今日だけだからな。次からはちゃんと食べろよ?』
「いいの!?」
『今回だけな』
「それなら海さん、この煮豆も食べてくだせぇ」
『それは食え』
朔夜に便乗して海の盆へと煮豆の皿を置こうとする総悟の頭を叩く。総悟のこれは完全に好き嫌いのものだ。それを食べてやるほど甘くは無い。
「いやぁ、伊東先生。今回は本当にご苦労さまでした。しかしあれだけの武器、よくもあの幕府のケチ共が財布のヒモを解いてくれましたな」
朔夜から茶碗蒸しを受け取りつつ、意識を近藤と伊東の方へと向ける。
確かにあの量の武器をよく手配できたと思う。刀も数多く、そして大半は物珍しい武器が多い。中には銃火器などの代物も混じっているし、地雷などの爆薬系、総悟がよく使うバズーカの改良型も仕入れられていた。
ここまで武器が揃えば、攘夷浪士が新型の武器を取り入れても対応出来るだろう。ただ、これらの武器をどこから仕入れてきたのかは詳しく聞きたいところではあるが。
伊東に疑いの目を向けている海とは裏腹に近藤は伊東を褒め称え、労りの声をかける。
「近藤さん、ケチとは別の見方をすれば利に聡いということだ。ならば僕らへの出資によって生まれる幕府の利を説いてやればいいだけの事。もっとも近藤さんの言う通り、地上で這いつくばって生きる我々の苦しみなど意にも介さぬ頑冥な連中だ」
「兄さん、がんめいってなに?」
『辞書で調べろ。人に聞いてばかりでは身につかない』
「んー……がんめい……がんめい……」
『……はぁ。頑冥、頑なという字に冥界の冥の字で頑冥。頑固でものの道理がわからないこと。または柔軟な考えが出来ないとかっていう意味だ。例えるなら……頑冥な親父、とかだな。類義語には頑固や頑愚が入る』
「すげぇや、海さんなんでも知ってるんですねい」
「さすが兄さん!」
『総悟、お前まで知らなかったとは言わせねぇよ?』
「そんなことありやせん。知ってましたぜ?ガンメイ」
『……ならいいけども』
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