第73幕
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「おい!こいつを取り押さえろ!」
『くそっ、離せ!』
敵に囲まれているのにも関わらず動きを止めてしまったせいで完全に浪士共に取り押さえられる。地面に叩きつけられるように倒されてしまい、胸が圧迫されて呼吸がしづらい。苦しさで涙目になりながら浪士を睨めばキッと睨み返される。
「何睨んでやがんだよ!」
『っう……』
ガツッと頭を蹴られて視界がぶれる。相変わらず土方は浪士に侮辱され一方的に蹴られていた。
『ひ、じかた!』
「はっ、上司があんなんじゃ部下も大変だろうなぁ?」
『ふざけんじゃねぇ……てめぇら全員ここで……!』
殺す、と吐きかけた言葉は誰かに脇腹を蹴られたことで掻き消えた。土方があの状態でなければコイツらを全員斬り伏せることが出来るのに。
一体どうして土方は攘夷浪士に命乞いなどしはじめたのか。
怒りに任せて動き出そうとすれば、浪士らからの暴行で身動きが取れなくなってくる。蹴られた頭の痛みが段々と響いてきたのか、意識を保っているのもしんどい。
『(も……限界……)』
かくんと意識が無くなる前に見えた土方の表情は困惑と悔しさだった。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
海の目がゆっくりと閉じられていくのを見て腸が煮えくり返る。それでも言うことを聞かない体。妖刀なんてものに魂を喰われるなんてバカバカしい。そう思っていたのにこのザマだ。
目の前で大切なやつが浪士に組み伏せられているというのにも関わらず、守ることすら出来ない自分に苛立ちを感じる。
目の前で浪士が自分に対して刀を抜く。このままだと殺される。気を失っている海に何もしないところみると、不安しかない。自分がこの場で殺されたらあいつはどうなる?男にも女にもウケのいいあいつは。
「(くっ……言うことを聞けよ!俺の体だろうが!)」
刀を掴もうと腕を動かすもすぐに地面に手をついてしまう。もうこれまでかと思った矢先に凛とした声が響いた。
「おい」
万事休すかと思い閉じた目を開ける。悲鳴と共に吹き飛ぶ浪士。海を押さえつけていた奴らも同様に斬り捨てられていく。
「あいつは……」
あっという間に自分たちを囲っていた浪士たちはただの屍として倒れている。突如として現れた男は土方と同じ隊服。
倒れている海に手を差し伸べてゆっくりとその体を持ち上げこちらを見る男。
「真選組隊士が襲われていると思い駆けつけてみれば……こんなところで何をやっているんだ?土方君」
「なっ……お前は……!」
朝、食堂を賑やかせていた男。
自分がもっとも苦手として嫌悪している人物。伊東 鴨太郎だった。
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