第47幕
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「しっかりしやがれ!てめぇがそんなんで誰があいつを助けにいくんだよ!」
「……俺には」
「あぁ!?」
「俺にはあいつを助けてやれない」
ガタンっ!と大きな音を立てて銀時は吹き飛ばされる。新八と神楽が驚いて部屋を覗くと、土方が荒い息を吐きながら銀時に殴りかかろうとしていた。
「土方さん!やめてください!」
「マヨラー!いくら銀ちゃんがこんなだからって殴るのは許さないネ!」
神楽と新八が土方の腕を掴んで銀時から引き剥がす。そして見兼ねた近藤が銀時の前に立ちはだかった。
「近藤さん、そこどいてくれ!コイツには殴らねぇと気がすまねぇ!」
「トシ!そんなことのためにここに来たわけじゃないだろう!」
「だけど!」
「すまんな、二人とも。トシを連れてこの部屋から出てくれないか?」
「は、はい!」
ずるずると引きずられるように土方は部屋から出ていく。それを黙って見つめる近藤。襖が閉じたのを確認してから銀時と向き合った。
「悪いな、万事屋。あいつはあれでも良い奴なんだ。ただ、ちょっと素直すぎるだけでな」
「……あれで素直って言うのかよ」
「不器用なんだよ。お前と同じで」
「……何が言いたいんだよ」
「今日は頼みたいことがあって来たんだ」
「……悪いが依頼は今度にしてくれ。今はそれどころじゃねぇ」
「いや、今じゃなきゃ困る。俺たちもお前みたいに腑抜けちまったやつが沢山いてな、俺もトシもちょっと前までお前みたいな状態だったんだよ」
苦笑いを浮かべる近藤を銀時は見つめる。
「でもな、それじゃ何も変わらねぇんだ。むしろもっと酷いことになってるかもしれない。あいつがまた一人で苦しんでると思ったら居てもたっても居られなくてな」
ぐっと拳を握りしめる近藤。
胡座をかいてラフな座り方をしていたのを正座へと直し、背筋を伸ばして銀時の前に座る。
そして近藤は銀時に頭を下げた。
「頼む。海を助けてくれねぇか。真選組としてじゃなく、俺、近藤 勲として頼みたい」
「……だから言ってるだろ……俺じゃあいつを助けられない」
「お前じゃなきゃダメなんだ。俺達は表立って動けない。助けに行きたくても行けねぇんだ。自分たちの手で連れ戻さなきゃいけねぇのはわかってる……俺ァ自分の立場をこんなにも恨んだのは初めてだ」
そういう近藤は悔しそうに顔を歪めて俯いていた。
「……あいつは今どこにいんだ」
「天人の貿易船に乗せられてる。その貿易船ってのが厄介でな……幕府の人間と深い関わりがあるんだ」
幕府の関わり。それで思い浮かぶのはあの男だ。海を天人へと引き渡したあいつ。
海の母親を天人の玩具にさせ、今度は自分の息子を売った。銀時を人質にして海を天人へ引き渡したのと同じく、母親の方もきっと海を人質にしたのだろう。
このままでは海は母親と同じ末路を辿ることになる。助けられるのは幕府と何の繋がりもない銀時だけ。
ゆっくりと目を閉じて一呼吸置く。ここで落ち込んでいる暇があるなら海を助けに行かなくては。銀時を守るために自分の身を投げ打った彼を。
「ちょっと部屋出ろ」
「へ?あ、あぁ」
虚をつかれた近藤はそそくさと部屋を出ていく。銀時はため息をついていつもの黒のインナーとズボンを履き、白い羽織に腕を通す。そして懐には大事そうに海のお守りを持って。
「……遅くなっちまってごめんな。迎えに行くから待っててくれ」
お守りを大事そうに抱いて、銀時は襖を開けて居間へと出た。
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