第31幕
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「辻斬りに直接桂さんのこと聞くなんて……そんなことして大丈夫なんですかね」
桂のペットであるエリザベスと共に新八は民家の横にある路地で辻斬りが来るのを今か今かと待っていた。
エリザベスが万事屋に来たのは数時間前。銀時と海の友人である桂 小太郎が行方不明になった。探すのを手伝って欲しいと銀時たちに頼み込んできたのだ。
本当だったらこの場に銀時もいるはずなのだが、彼は別の依頼を受けているのかここにはいない。他で仕事をしているのであれば仕方ないと思いつつ、まさかエリザベスからの依頼を受けるのが嫌で逃げ回っているのではないかという気持ち半分。
結局、銀時を頼ることなく新八と神楽でエリザベスの依頼を請け負うことになったのだが、桂の足取りは掴めずにいた。
今現在、神楽とは別行動を取り、新八はエリザベスと行動を共にしていた。
エリザベスの提案により、辻斬りの首謀者を捕まえるという危ない策を実行している。もしかしたら辻斬りが桂を襲ったかもしれないと言ったエリザベス。辻斬りと会うだなんて下手したら自分たちが殺されるかもしれない。それでもエリザベスは必死に桂を探しているのだ。ならば、と新八も危険を承知で手を貸すことにした。
そう決めたのだが、やはり怖いものは怖い。ブツブツと女々しい弱音を吐く新八にエリザベスは持っていた刀を無言で振った。
「何すんですか、ちょっと!……うん?」
突然のことに驚いて目を見開き文句を飛ばす。一体なんなんだと苛立ちながらエリザベスへと視線を向けると、その手にはいつもの白い看板。くるっとそれがひっくり返って文字が見えた。
"俺の後ろに立つな"
エリザベスの顔がいつもの気の抜ける顔からキリッとした顔へと変わる。そしてその頭にはエリゴと書かれたハチマキ。
「うるさいよ!どっちが前だか後ろだか分からん体してるくせに!」
文字が書かれた看板を見た新八がさらにエリザベスに吠える。流石にそれだけ騒いでいれば、他の人にも気づかれるというもの。新八の声に気づいた見回りの役人が訝しげな表情で路地に潜んでいた新八たちへと声をかけてきた。
エリザベスは役人に関係ないと突っぱねるも、役人は辻斬りがいるから早く家に帰れと促す。やはりこんな事をしていては危ないのではないかとエリザベスに再度、問いかけようとした時。
目の前にいた役人が血を吹き出しながら新八の横に倒れた。突然のことに頭が追いつかず、倒れて動かなくなった役人を呆然と見つめる。
「辻斬りが出るから危ないよ」
役人の言葉の続きを代弁する男。
その男が持つ刀は役人の血で汚れ、赤が滴っていた。
「はっ……うわー!!」
目の前に現れた辻斬りに新八は叫びその場で固まる。そんな新八を守るべく、エリザベスは足を振り上げて新八を後方へと蹴飛ばした。
「エリザベス!!」
新八を庇ったが故にエリザベスの頭上へと刀が振りかざされる。危ないと声をかける間もなく、エリザベスへと振り下ろされていく刃。必死に手を伸ばしてもエリザベスに届くことは無い。
もうダメだ!そう思った刹那、辻斬りが手にしていた刀が空高く吹っ飛ばされた。
「おいおい……妖刀捜してこんな所まで来てみりゃ……どっかで見たツラじゃねぇか」
「ぎ、銀さん!」
張り詰めた空気とは裏腹にのんびりとした声が辺りに響く。近くに置いてあったゴミ箱からのっそりと現れたのは木刀を手にした銀時だった。
銀時の姿を見たと同時に緊張の糸がほぐれ、バクバクとうるさかった心臓が少しずつ落ち着きを取り戻していく。彼がいるならきっと大丈夫だという安心感。自分たちでは辻斬りに桂の行方を聞くことは難しいかもしれないけど、銀時ならやってくれるかもしれない。
「ホントだ」
「うん?」
「どこかで嗅いだ匂いだねぇ」
そう言って男は被っていた笠を取る。相手の顔が見えた新八は驚きで目を見開く。この男は以前、銀時の赤ん坊疑惑の時にいた人物。
「くだんの辻斬りはあんたの仕業だったのか!それに銀さんも……なんでここに?」
「目的は違えど、あいつに用があるのは一緒らしいよ、新八君。それとちょっと迷子の子猫を探しててな、うろうろしてたらここについたってわけよ」
「うれしいねぇ。わざわざ俺に会いに来てくれたってわけだ?こいつは災いを呼ぶ妖刀と聞いていたがね。どうやら強者を引き寄せるらしい。桂に……閃光にあんた……」
似蔵の言葉に銀時が反応し、睨んでいた目が更に鋭くなった。桂ならわかるが、"閃光"という言葉には聞き馴染みがない。
なんとなくエリザベスの方へと目を向けてみたが、彼も閃光という言葉の意味をわかっていないようだった。
「(人の名前……じゃないよね。でも、言い方からして誰かを呼んでいるようだけど……)」
似蔵と銀時だけが知る存在。そしてその相手も似蔵の手にかかったということ。
そんな相手に銀時が勝てるのかと、不安な気持ちが新八の中を駆け巡った。
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