第46幕
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「帰ってきたかな?」
項垂れている銀時を他所に西ノ宮は扉へと目を向ける。そこには隊服を脱いで着流しに身を包む海が立っていた。
『終わらせた。これでいいだろ』
「うん。じゃあ、後はこっちでやっといてあげるから。最後のお別れでもしておいたら?」
満足そうに頷いた西ノ宮は海を連れてきた男たちを引き連れて部屋を出ていった。
『銀時』
二人だけなのに海は誰にも聞かれたくないのか小さな声で呟く。
『ごめん。俺のせいだ』
「海のせいじゃねぇよ。俺がへましたからこうなっただけで。お前のせいじゃない」
泣きそうな顔で俯く海に慰めの言葉をかけるもまったく意味をなさない。床を睨むように見つめている海は銀時の方を見ないようにしていた。
「海、」
名前を呼んでも海は顔を上げない。
「ねぇ、海。ちょっとこっち向いてくんねぇ?」
『……なんで』
「なんでも」
『必要ないだろ』
「あるんだよ」
だからこっちを向いて欲しいと再度声をかけると下を向いていた顔がゆっくりとこちらを見た。
ああ、やっぱり。
「海」
『ごめん……銀、ごめん』
真っ赤に腫れた目で涙を流しながら海はその場に座り込んだ。しゃくりあげながら泣いているのに何もしてあげられない。目の前にいるのに抱きしめてあげることも出来ないなんて。
「謝るのは俺の方だ……こんな泣かせてんのに何も出来ねぇなんてよ」
『そん……なこと!お、れが……ちゃんとして……れば』
「何言ってんだよ。お前は俺を守ろうしてくれただろ。あんな奴ら相手に一人で頑張って傷ついて」
とても怖い思いをしたはずだ。本人は必死に隠そうとしていたが、西ノ宮を前にして怯えた顔をしていた。父親に会うのは何十年ぶりだというのに海の心の奥底にはまだ西ノ宮に対しての恐怖心が残っている。
それでも海は西ノ宮を相手に臆せず立ち向かった。
「海こっちおいで」
手枷を嵌められているから銀時の方から海の元へはいけない。こうして海の方から来てもらうしか。
『ぎん』
「おいで」
這うようにこちらへと来た海は縋るように銀時の胸へと飛び込む。
『ぎん、ぎん』
「海」
抱きしめてあげられない代わりに海の頭に自分の頭を擦り付けるように寄せる。何も出来ない悔しさに視界が歪んでいく。
『全部……やってきたから……西ノ宮に言われたこと終わらせてきたから』
「海、俺は大丈夫だから。あいつの言いなりになる必要はねぇよ」
『やだ……銀時がもう傷つくのは見たくない!』
駄々をこねるように首を振って嫌だ嫌だと繰り返す。どうすれば安心させられるかを考えてみたけど答えは出なかった。
『すぐに帰れるから。遅くなってごめんな』
「頼むから話聞いて。大丈夫だから。これくらい大したことないって」
『神楽と新八だってきっと心配してる。だから銀時は早く家に帰れ』
「海!」
『……銀時、こんな時に言うのもなんなんだけどさ』
「なに……」
『俺……お前のこと愛してるみたい』
「は……」
『もっと早く気づければ良かったのに』
そう言って笑った海は今にも消えてしまいそうなほど儚かった。
そっと触れるだけのキスをしたあと海は部屋を飛び出していった。
それからすぐ銀時は解放され、海は江戸から居なくなった。
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