第46幕
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海が居なくなった部屋に静寂が訪れる残されたのは銀時と不気味な笑みを浮かべている西ノ宮。
「てめぇだけは許さねぇ……」
「酷い言い方をするじゃないか。さっき程も言ったけれど、怒りの矛先を向ける場所が違うんだよ。君はまだそれを分かっていない」
「分かりたくもないね。そっちが手を出さなければこうはならなかったんだからよ」
「それはどうかな。君もあの子もいずれは破滅する運命だったでしょ?」
「何が言いたい」
「知ってるんだよ。君たちが……何をしていたのかをね」
気味の悪い笑みを浮かべる西ノ宮に銀時は冷や汗を垂らす。
「身分を隠して幕府に潜り込むなんてあの子もよくやるもんだね。まったく……誰に似たんだか」
海の過去を知られている。戦場を駆け回っていた銀時は白夜叉として名前が残ってしまっているが、海の二つ名はあの時戦場にいた者しか知らないはず。なんせ海の存在は銀時たちが隠し続けたから。
「なんで知ってるんだって顔だね。僕もまさかと思ってたんだよ。海の居場所を探し続けてたら出てきたんだ。あの容姿で戦地を駆けてる子なんて中々いないからね」
「だから?見た目だけで海だとは限らねぇだろ」
「あの子は母親に似すぎたんだよ。男のくせにあれだけ凛々しい顔立ちをしていたら目立つ。戦争で生き残った天人はその姿をもう一度目にしようと躍起になっているし。それに……美しいものほど壊したくなるだろう?」
狂っている。この男は人として外してはいけないものを外した。
「本当に……アイツは誰に似たんだか。少なくともてめぇみたいな性格破綻者には似てねぇよ」
こんな男の元で育ってしまった海が可哀想だ。この男のせいでトラウマを抱えて苦しみ、母親からも引き離されて子供の頃に毎晩泣いていた。
そしてまた海は西ノ宮に苦しめられている。
そうならないように守ってきたつもりだったのに。
──お願い!あの子を守って……私の代わりに守って!
燃え盛る小屋の中で海の母親が叫んだ言葉がいつまでも耳から離れない。耳の奥に頭の中にこびり付いて離れないのだ。
「(守るって約束したのにこのザマか)」
海を苦しめているのは西ノ宮だけではない。きっと銀時も海の足を引っ張っているのだ。守ると口にしていても、心の中で思っていても実現しない。むしろ海に守られてしまっている。
「(情けないったらありゃしねぇよ。いつも……あいつに守られてばっかだ)」
あの崖から落ちたときも。本当は銀時と高杉が落ちるはずだったのに。
己の弱さを痛感したところで何も出来ない。ただ、後悔するだけしか許されなかった。
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