第46幕
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「ちょ、ちょっと待ってください!あなたたち誰なんですか!?」
山崎の慌てる声とこちらへ向かってくる足音。何事かと土方が廊下へと顔を出すと今度は土方の怒鳴り声が廊下に響く。
「てめぇら何もんだ!部外者が勝手に入ってくるな!」
「こちらに海様がいらっしゃいますよね。中々戻ってこないので迎えに来ました」
ズカズカと局長室に足を踏み入れてきたのは海をここまで連れてきた運転手とその付き添い人。海が逃げ出したのかもしれないと思ってここまで見に来たのだろう。
「時間です」
『わかった』
腕を引っ張られて部屋を出ようとした海の手を近藤がガシッと掴む。
「待て。こいつはウチの隊士だ。アンタらが何処のもんか知らねぇが、ウチのモンを連れていくっていうなら俺を通してくれないか」
「その必要はありません。この方はもう真選組を抜けた身。あなたたちの部下ではありません」
「海が抜けることはまだ許してねぇ」
運転手の視線が近藤から海へと移され、海は頭を横に振った。
『言っただろ。除隊させてくれって』
「理由もなく抜けるなんて出来ると思ってるのか?俺が許しても……トシが許さねぇよ」
視界いっぱいに黒が入り込む。顔を上げるとそこには土方の背中。
「悪いがこいつを連れていかせるわけにはいかねぇ。自分の意思で出ていくってんならまだしも、誰かの言いなりで抜けるなんてことは許さねぇ」
『土方……』
「海様。わかっていらっしゃいますよね」
運転手の言葉にどくりと心臓が脈打つ。
『土方、誰かに言われてやってるわけじゃない』
「何言って──」
『だからそこを退け』
こちらを振り返ろうとした土方を蹴飛ばす。壁に頭を打ち付けて倒れ込んだのを横目に海は廊下へと出た。
「海!」
『邪魔すんなって言ってんのが分かんねぇのかよ。これ以上口挟むなら……潰すぞ』
蹴り飛ばされても尚引き留めようとしてくる土方に殺気を向ける。ここまですればもう口出ししないだろう。
『じゃあな。精々頑張ってくれ』
来ていた真選組の上着を土方へと投げ渡し、運転手と付き添い人を引き連れて廊下を歩く。屯所の門までに何人もの隊士と鉢合わせたが、誰にも声をかけずに素通りした。
「兄さん!」
車へと乗り込もうとした寸前、屯所から飛び出てきた朔夜に服を掴まれて足が止まる。
「どこに行くんですか!?それにさっきのあれはなんですか!?」
『離せ。お前には関係ない』
「関係あります!なんでこの人たちと一緒なんです?この人達って父さんの部下の……」
『朔夜』
運転手を見て怯えた顔を浮かべる朔夜に優しく声をかける。その声色に朔夜は期待に満ちた目をしたが、すぐさま絶望の色へと変えることになった。
『お前はここに捨てられたんだよ。西ノ宮がお前のこと要らないってさ』
「なに……それ……」
『西ノ宮を継ぐにはお前は出来損ないで使えない。誰かに縋るだけのガキには荷が重い』
「にい……」
『西ノ宮にお前はいらない』
驚いて見開かれた目から大粒の涙が零れる。そんな朔夜の肩を押して自分から引き剥がし、屯所から出てきていた土方の元へと首根っこ掴んで引きずる。
『頼んだ』
土方にしか聞こえない声で呟いてから朔夜を押し付ける。そのまま振り返らず車へと乗り込んで西ノ宮の屋敷へと戻った。
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