第46幕
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「やっと素直になってくれたようだね」
銀時を守るためにはこうするしかない。
「今まで反抗したことは許すよ。反抗期だと思えば可愛いものさ」
元はと言えば自分が西ノ宮の話を無視し続けていたせいだ。その報いなのだとあれば甘んじて受け入れるしかない。どれだけ理不尽だと思っていても。
「そうとなれば色々とやらないとね」
『……何をすればいい』
「まずは真選組を抜けてきてもらおうかな。彼らも一応幕府の人間だからさ。海がそこに所属している状態で宙に行ったらマズイからね。誘拐だの拉致だのって騒がれたら面倒臭いし」
今までやってきた事なのに今更そんな事を考えるのか。
言いたいことは山ほどあったけど、もう反抗する気力もない。
「天人の船に乗り込む手続きはこちらでしておくよ。彼らの元に行ったらちゃんと言うこと聞くんだよ?じゃなければ……分かってるよね?」
少しでも抵抗すれば銀時の命は無い。そう笑う西ノ宮に小さく頷く。
「いい子だね。それから──」
「おい……てめぇ何言ってんだ」
西ノ宮の後方から聞こえてくる声。苦しげに発された声は怒りが滲んでいた。
「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。そいつはお前らの玩具じゃねぇ」
ボロボロになりながらも銀時は付けられた手枷を外そうと腕を引っ張る。そんな事をすればまた傷が増えてしまう。
『……銀、もういい。もういいから』
「何が良いんだ。なんも良くねぇだろうが!」
『もう……いいよ』
諦めはついた。だからもう無駄な足掻きはやめにする。そう呟くと銀時は目を大きく見開いて海を見つめた。
「君より海の方が聞き分けがいいよ。ちゃんと自分の立場を理解してるからね」
「っざけんな!お前がそうするように仕向けたんだろうが!!」
「そうかな?これは僕だけのせいになるのかい?大切な子を守れなかった自分の弱さを認めずに人に八つ当たりするなんて。君はとても傲慢だね」
頬に西ノ宮の手が触れて鳥肌がぶわりと立つ。その手から逃げようと顔を振ったが、逃げることは許さないと首を掴まれた。
「君の弱さが海を殺すんだよ。可哀想に。共にいる人間はきちんと選んだ方がいい。まぁ海はもう選べないけどね」
『戯言はいい加減にしろ』
「そうだね。時間もあまりないし。車を出すから早く行っておいで」
銀時をここに置いていくのは不安だが、このままにしておくことも出来ない。西ノ宮に言われたことをやってくればすぐに解放されるはずだ。
「海ッ!」
『無駄な抵抗はやめろ。それ以上傷が深くなったら痕が残る』
自分のせいで怪我を増やすのだけはやめて欲しい。手当をすることも一緒に病院に行ってあげることも出来ないのだから。
行くな、と銀時に引き止められて足が止まりそうになる。そんな海の背中を西ノ宮が押した。
「待ってるのは退屈だから。早く済ませてこないと彼で遊んじゃうかもよ」
耳元で囁かれた言葉は酷く胸を締め付ける。
『分かってる……だから……』
「うん。なら急ぎなさい。彼の命は海が握ってるようなものだからね」
笑顔で歪んだ顔を殴りつけたい。ここにいるヤツらを全員殺して銀時を助け出せれば。
硬く握りしめた拳を西ノ宮にぶつければいい。ただそれだけの事なのに出来ずにいた。
「行ってらっしゃい」
銀時を失うのが怖くて。思い出されてしまった過去のトラウマに怯えることしか出来ない自分を恥つつ、海はただ言いなりになるしかなかった。
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