第46幕
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ぶらりと歩く街の中。辺りは既に真っ暗で、お情け程度に設置されている街灯が夜闇を儚げに照らしていた。
仕事帰りの身体は休息を欲していて、今すぐ布団の中へと潜り込みたかった。コキコキ、と凝り固まった首元を回して銀時は小さく息を吐く。
そういえば今日は海に会わなかった。ここのところほぼ毎日と言っていいほど会っていたので、こうして会わない日があると違和感を感じてしまう。
別に恋人という関係ではないのだから毎日会う理由なんて、と思うのだが、子供の頃から抱いている恋情のせいで自然と海の事を探してしまうのだ。
やっと我が家に着いたかとホッとしたのもつかの間、何やら黒服の集団が家の周りを囲うように立っているのが見えた。
「あ?なんだなんだ?そんなにあのババアの店が流行ってんのか?」
「貴様は万事屋の店主だな?」
「あ?俺になんの用──っあぶねぇな!」
集団の一人がこちらに気付いて振り向く。その男の手には刀が握られている。このご時世で刀を持っている一般人はいない。居るとしたら警察か攘夷浪士、そしてこういう怪しい者たちくらいだ。
振り上げられた刀を瞬時に避け、応戦するように木刀を腰から引き抜く。
「おいおい。依頼なら言葉で言え言葉で」
「貴様に依頼などない」
「なら帰ってくんない?俺今疲れてるんだわ」
じりじりと近づいてくる輩に対して帰るように促してみたが、相手は刀を手にしたまま微動だにしない。
「(こいつら何処のもんだ)」
人から恨まれることは慣れている。でも、こんな暗殺集団を雇われてまで恨まれる覚えは無い。過去に受けた依頼や人間関係を振り返ってみたけど、ここまでやるような人物は居なかったはずだ。
こんな集団を雇ってまで銀時を消そうとしている人物。
「あいつか」
思いつくとしたらあの時野という男。あの男ならやりかねない。
「お前にはここで死んでもらうぞ」
男の言葉を皮切りに銀時を囲っていた男たちが一斉に飛びかかってくる。疲労が溜まっている身体に鞭打って男どもを蹴散らそうとするも、簡単に倒れてくれる訳もなく気力だけが削られていく。
「クソッ……!」
忍者のように軽やかな身のこなしで銀時の木刀を避け続けられている。これでは体力を消耗するだけだ。どうしたものかと考え始めたとき、頭上から聞きなれた声が響いた。
「銀ちゃーん。何してるアルかー?」
「神楽!」
外の騒がしさに気づいて出てきたのか、玄関先で神楽が手を振っているのが見えて冷や汗が垂れる。襲撃犯がそんな隙を見逃す訳もなく、数人が神楽の方へと走り出した。慌てて彼らを止めようとしたが間に合わず、その場に残ったやつらに道を塞がれて神楽の元へと行けなかった。
「おい、てめぇの用は俺だけだろうが。あいつには関係ねぇだろ!」
「誰がお主にだけ用があると言った?」
「は?」
「我らは"万事屋"を殺れとしか命令されておらぬ。お前個人ではない」
「なっ……てめぇ!」
銀時だけが狙いでは無い。万事屋が狙いだということは神楽だけでなく新八も危ないということだ。新八の側にはお妙がいる。あのゴリラ女であれば抵抗するだろうが、この集団相手では一溜りもないはず。
ここにいるヤツらを追い払ったらすぐに新八の所へ向かわねば。そう思って目の前にいた男へと木刀を振り上げる。その直後に頭へと鈍痛。痛みに顔を顰めながら振り返ると倒れていた奴が起き上がっていた。
「銀ちゃん!!!!」
「縛れ。旦那様の元へ連れていくぞ」
薄れゆく意識の中で神楽の悲痛な叫びが聞こえる。それを最後に銀時は地面へと倒れた。
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