第31幕
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「だ、旦那!?」
総悟の胸ぐらを掴んで引き上げる。怯えた顔でこちらを見上げる総悟を睨みつけ、沸々と湧き上がった怒りをぶつけた。
「海一人に見回り行かせたのかッ!?」
辻斬りが横行しているというのにも関わらず、海を一人で見回りに出したのか。確かにあの子は強い。それは自分がよく知っていること。でも、万が一のことがある。強いと言っても最強ではないのだから。
海にもしもの事があったらコイツらはどう責任を取るつもりなのか。
「局長命令で巡回には二人一組で行くことになってるんです。でも、海さんは誰にも声をかけずに行った。海さんが一人で出ていっちまったんでさァ!」
総悟も銀時に負けじと睨み返してきたが、それさえもねじ伏せるほどの睨みを彼に浴びせると、萎縮して口を閉じてしまった。
総悟の言い方は海が悪いと言っているように聞こえる。見回りに一人で行ってしまった海が全部悪いのだと。きっと、彼は海のことを責めている訳ではないのだろう。忽然と消えたことによる心配と怒り。もし辻斬りに襲われているならば早く見つけ出さなければという焦りで、総悟は冷静さ失っている。
そんな事知ったこっちゃない。ただ、海が行方不明になったという事だけが銀時の頭の中を駆け巡る。
総悟の胸ぐらを掴む手にも力が入り、首に巻かれているスカーフがキュッと締まる。銀時の手を取ろうと総悟は藻掻くが、息苦しさで力が段々と弱まっていった。
「おい、そんくらいにしてやってくれねェか」
「……お前らに任せたのが間違いだったようだな、おい」
渋々といった感じで銀時は総悟を掴んでいた手をぱっと離す。突然手を離された総悟はその場に座り込み、苦しそうに咳き込んでいた。
「しっかり見ていたはずだったんだがな。本人がふらりと出て行っちまったんじゃ探しようがない」
「言い訳か?あ?」
確かに海が一人で行ってしまったのは悪い。それに関しては土方と総悟が怒っているのも理解出来る。だが、海は無意味に一人で出てったわけではないはずだ。辻斬りを一人で捕まえてこようなんて思わないだろう。
一人で行かなければならない状態だったのかもしれない。海の性格を考えれば自ずと理由が思いつく。ここ最近の真選組の動きを見ていれば、内情を知らない銀時でも易々と答えがわかった。
「海が最後に寄った場所とか分かんねぇのかよ」
彼は町民たちから愛されている。見回り中の海を見かける度に誰かと話している姿を見ているのだ。
外に出ているのであれば誰かしら海の姿を見ているのではないか。誰かと話をしているのではないかと期待したのだが、土方はただ横に首を振っただけだった。
「今、隊士たち全員に江戸中を探させてる。俺もそこにいるやつも朝からずっと探してるが、どれだけ探してもあいつがいた痕跡が見つからねぇ」
土方の言葉に銀時はコイツらでは海を見つけ出すのは無理だと察し、少しでも期待した自分を恥じた。
「海は俺が探す」
「……悪かった」
「何が」
もう土方たちと話すことは無い。海は自分で探し出す。そう決めて銀時は歩き出した。土方の横を通った時に聞こえた消え入りそうな謝罪に収まりつつあった怒りがまた再熱する。
顔に出さないように必死に隠しはしたのだが、どうやら無意識に土方を睨みつけていたらしく、土方はその睨みに耐えきれず目を逸らした。
「いや……」
「もう俺行くから。仕事の途中だし……」
こんな所で立ち話している暇があるなら海を探す方に手を尽くしたい。
「無理してなきゃいいけど……」
何かとあの子は無理をしやすいのだ。自分の限界を知らないのかと思ってしまうほど、海は動き続けてしまう。集中してしまうと周りのことが見えなくなり、誰かに頼るという選択肢を切り捨てる傾向にある。昔からの海の悪い癖だ。
「見つけたら説教だな」
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