第44幕
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散々泣きながら暴れた海は今ではすっかり大人しくなっていた。
汚れているから離れろと言う海を強く抱き締めて海は汚れてなんかないって何度も言い聞かせたが、海は首を横にふるだけで銀時の話を聞いてはくれなかった。
暴れ疲れ、泣き疲れた海は電池の切れた玩具のように力を無くし眠った。
「もっと早く来てればこんな事にならなかったのに」
憔悴しきった顔で眠る海を腕の中に閉じ込める。近くにいたのに助けてあげられなかった悔しさが沸々と湧き上がり、それが怒りへと変わった。まだ後ろでのびているであろう男たち。
殺すだけでは足りない。アイツらに海が感じた以上の恐怖を与えねば。
先程は海に止められてしまったが、今は止める人間はいない。なら今やるしかない。
海を地面に寝かせようと手を離した時、後ろからこちらへと向かってくる気配を感じて海を抱え直した。
「坂田さん!兄さんは……」
「こっちに来るな。お前は屯所戻ってマヨラーたち連れてこい!」
「で、でも!」
「いいから行ってこい!!」
「っ……は、はい!」
こんな状態の海を誰かに見せるわけにはいかない。例え、それが弟の朔夜だとしても。海本人も嫌がるだろう。なにより自分が見られるのが嫌だった。
着ていた着物を脱いで海を包むようにして抱き上げる。いつまでもこんな所に居ては良くない。海が目覚めた時に安心できる場所でなければ。そう思った銀時は海を万事屋へ連れていくべく歩き出した。
「おいたわしや」
「あ?」
ここには海とあの男たちと自分しかいないはず。それなのに背後には燕尾服姿の男。いつだったか時野と名乗った男がそこに立っていた。
「あの時、海様が旦那様の元へと来ていればこのような事にはならなかったでしょう」
「テメェ……何が言いたい」
「そのままの意味でございます。貴方様が海様の枷とならなければ。家族などと騙らなければ。海様はこのような事にならなかったのですよ」
それはまるで全て銀時が悪いような言い方。そして、海がその旦那様という奴の元に行かないという選択をしてしまったが故にこうなった。
"こうなる事を避けられた"
「……お前か」
「何のことでしょうか」
「海の事をコイツらに襲わせたのはてめぇかって聞いてんだよ!!!」
無表情だった時野がピクリと眉を上げる。座り込んでいる男へと目を向けると、男は必死に首を振っていた。
「お、俺は何も言ってない!!言われた通りにしただろう!頼むから……頼むから娘を早く返してくれ!」
「貴方の娘はもう地球にはいませんよ。今頃、天人達に囲まれて楽しい"宴"に身を委ねていることでしょう」
懇願する男に時野は不気味な笑みを浮かべた。その顔に男は絶望し呆然と時野を見つめていた。
「クソ野郎が……」
海を襲った男たちも身内を人質にされていた。海を襲わざるを得ない状況にしたのだろう。家族を返して欲しければ指示する通りに動け、と。
『ん……』
銀時の殺気に反応して海がゆっくりと目を開ける。まだ意識がハッキリしてない中、海は銀時を視界に映した。
『ぎん……?』
「まだ、まだ眠ってなさい」
今は起きないで。頼むから。
子供をあやす様に小刻みに身体を揺すってやれば、ゆるりと閉じられていく瞼。
「私は一先ず退散させていただきます。また後日、海様を引き取りに伺いますので。くれぐれも海様の事をよろしくお願いいたします」
それだけ言い残して時野は銀時に会釈をして去っていった。その場に残された銀時は時野の背を忌々しげに見つめた。
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