第31幕
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「邪魔したな」
店主との話を終わらせた銀時は店の戸を閉めた。
夕暮れの空を見上げながらため息をこぼす。頼まれた依頼を遂行すべく、先程の店を含めてもう何軒もの質屋をまわった。
妖刀紅桜。それが人に仇なす前に見つけてきて欲しいという鍛冶屋からの依頼。ただ、盗まれただけなのであれば質屋などに売り払われて金にしている可能性が高い。そう思って店を転々としているのだが、どこの店にも売り払われた形跡がなかった。
「ここも空振りか。てっきり売り飛ばされてると思ったんだが……金目当てじゃねぇってことは……」
嫌な予感がする。考えたくはないが、金目当てでないのであれば刀自体に何らかの目的があるということ。妖刀と呼ばれるほどだ。悪用しようものならば大変なことになるだろう。
また海にどやされる。先日も面倒事に巻き込んだばかりなのだ。今回ばかりは海の耳に入らないようにしなければ。彼は何かと手を貸してくれるから。仕事が忙しいと言いつつも銀時の為に助けてくれる。その気持ちに甘えてしまうのが自分の悪いところだ。
今回の件は海の手を借りずに済ませたい。
だからこそ目の前にいる人物に悟られてはならない。この人間にバレるようなことがあれば海の耳にも確実に入る。また面倒事に巻き込まれているなんて彼が知ったらすっ飛んでくるだろう。
「探し物ですかい?旦那」
電柱にもたれかかるようにして立っている栗頭の少年。彼はよく海と共に江戸の見回りをしている。
確か海が"総悟"と呼んでいたような。
「仕事だよ仕事。お前とは関係ねぇからほっといてくれ」
海の身近な存在である彼に悟られることの無いように。下手に深く話を聞かれてしまう前に去ろうと顔を背けた。
「そいつはお忙しいところ失礼しやした。最近、ここいらでは辻斬りが流行ってましてね……」
銀時の横を通り過ぎた総悟が立ち止まって口を開く。
「まぁ、出会ったやつはみんな斬られちまってんだが。遠目で見たやつがいるらしくてね。そいつの持っている刀が……刀というより生き物みたいだったそうでさァ」
「そ、そいつは…………さっきそこの店で聞いた」
先程までいた店を指差す。その話は質屋の店主から聞いた。また物騒な輩がここら辺をウロウロしてるんだなと、どこか他人事のように聞き流していたが。
「旦那、一つ聞きたいことがあるんですがいいですかィ?」
「なんだよ今度は……こっちだってなぁ、朝から動いてて疲れてんだよ」
「海さんが昨晩から行方不明なんです。なんか知りやせんか」
「……は?」
今こいつはなんと言った?
「昨日、うちのやつが海さんに巡回頼んだらしいんです。海さんはその巡回を代わって……それきり屯所に戻ってきてません。旦那の所に行ったりしてやせんか?」
巡回を代わった。ということは、いつものように海が見回りに出たということ。そしてそのまま姿を消した?
「本当にどこに行ったのか分からねぇのかよ」
「海さんが行きそうなところは全て回りやした。でも、何処にも顔を出してないんです」
「ちゃんと探したのかよ」
自分でも驚くほど冷たい声。総悟はびくりと肩を揺らし、こくりと小さく頷いた。その態度に銀時の何かがキレた。
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