第43幕(微裏?)
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『パトロール行ってきます』
「行ってきます!」
「おう!行ってらっしゃい!」
近藤に見送られて海と朔夜は屯所を出た。
朔夜が来てから2週間経った。その間、西ノ宮から連絡が来ることも無く、何事もなく日々が過ぎた。
最初こそは朔夜への対応に悩んでいたが、時間が経つにつれてどうでも良くなった。そう思ってしまうほど、朔夜から向けられる尊敬の眼差しが強いのだ。悩んでいるのが馬鹿らしくなってしまった海は朔夜の事をきちんと受け入れた。
そんな折、近藤さんが朔夜を仲間にしないかと海に持ちかけた。何でそんなことになったのだと聞けば、朔夜が総悟に剣を教わっているとのこと。
いつの間に刀を握るようになったのか。屯所の道場に赴くと毎日のように総悟と特訓している朔夜の姿を見かけ、海は本人に見つからないように特訓を眺めていた。
その心意気に胸打たれた近藤が朔夜を隊士として受け入れてみないかと。当然、海は首を横に振ったが。
朔夜には帰る場所がある。そう言って海はその話を終わらせた。もうそんな話題は出てこないだろうと、そう思っていたのだ。
『あのクソマヨラー……』
局長室から出た海を待っていたのは副長である土方。煙草をくわえながら腕を組み、柱に寄りかかるようにして立っていた土方は海を一瞥してから近藤へと目を向けて一言。
"いいんじゃねぇか?とりあえず入れてやって、途中で逃げ出したら締め出せばいい"
土方らしからぬ言葉に呆気に取られた海は思考が停止した。まさか土方が朔夜を隊士にすると言うと思わなかったからだ。
何度も近藤に朔夜を入れることを反対したが、結局朔夜はこうして海と共に見回りに出ている。
海の意見は全て笑って流されてしまったせいで。
「兄さん?」
『なんでもない。こっちの話しだ』
「?」
悪態ついた海に朔夜が小首傾げる。気にするな、という念を入れて傾げられた頭を少し乱暴に撫でた。
いつもの見回りのルートを歩くと、八百屋の店主に声をかけられた。
「海くん!今日も見回りかい?」
『あぁ、おじさん。うん、見回り』
「大変そうだねぇ。いつもお疲れさん!」
『おじさんもお疲れ様』
にっかりと笑う店主に海も笑い返す。八百屋の店主と別れたあと、魚屋のおばさん、団子屋のおばさんと次々に声をかけられた。
徐々に増えていく人に朔夜が海の服を掴んで戸惑いの表情を浮かべる。海からしたらいつもの事なので気にもしないが、朔夜からしたら驚きの連続だろう。
町民からやたらと声をかけられ、その都度足を止めて会話に花を咲かせる。中には相談事もあり、海は町民の言葉にひたすら耳を傾け続けていた。
「兄さんっていつもこうなの?」
すっかり怯えきってしまった顔で海の服を両手でガシッと掴んだ朔夜が海を見上げた。
胸元には困惑に揺れる瞳。苦笑いしながら朔夜の頭を撫でた。
『まぁ……いつも、だな?』
「兄さんってみんなに人気なんだね」
『話しやすいとでも思われてるんじゃないか?瞳孔ガン開き野郎に聞くよりも、ストーカーしてるゴリラよりも、一見愛らしいツラしてるように見えても毒吐く子供よりも』
「名前を聞かなくても誰のことか分かっちゃうあたり悪意あるよね、兄さんのその言い方」
『別に貶してはいねぇよ。全部本当のことだろ?』
「だからこそ悪いんだと思う、うん」
そうか?と海は首を傾げた。今度は朔夜が苦笑して「そんな兄さんも大好きだけど!」と呟いた。
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