第42幕
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「兄さん!ご飯食べに行きましょう!」
『ん……朔夜……?』
「朝ですよ!兄さん!」
ゆさゆさと身体を揺さぶられて海は目を覚ました。昨晩の飲酒のせいでズキリと痛んだ頭。そんなことをしらない朔夜は早く早く、と海を急かした。
二日酔いの状態で寝巻きから隊服へと着替えた。縁側にいる朔夜が隊士たちに挨拶しているのを聞こえ「朝から元気だな」とため息混じりに笑った。
そわそわしている朔夜を連れて食堂へと顔を出す。隊士たちにおはようございますと声をかけられては気のない返事をしてあしらった。
機嫌の悪そうな海の態度に隊士たちは苦笑いを返すだけで誰も文句は言わない。昨日に海が酒を飲んでいたことを知っているし、今現在、彼の周りをちょこちょこと動き回る子供が原因だということを誰もが理解したからだった。
「海さん」
食堂に入って適当に椅子に座ったところで声をかけられる。声のした方へと気だるげに振り返ると、眠そうに目を擦っている総悟がいた。
『おはよう、総悟』
「おはようございやす。今日は一段と不機嫌そうですねェ」
『二日酔いが少し酷くてな』
「そんなに近藤さんと飲んだんですかィ?」
『酒瓶、二本くらいしか開けてないんだけどな』
近藤が来た時には既に一本飲み干していた。もう一本は近藤と共に飲んだから半分くらいしか飲んでいないはず。お猪口で飲んでいたからそんなに飲むスピードは早くなかった。
「疲れてたから酔いが酷くなったんじゃありやせんか?」
『はぁ……久しぶりに飲むとこうなっから嫌なんだよな』
「飲まなきゃいいのでは?」
『飲まないとやってられない時があんだよ』
「へぇ……大人ってのは大変ですねェ」
子供にはわからない気持ちです。と総悟に笑われ、海は拗ねたように顔を逸らした。
逸らした先には朔夜がいて、じっと何かを見つめている。
『飯食いに来たんだろ?好きなもん作ってもらえよ』
まだ自分は食べる気にならない。ぐぅ、と情けない音を鳴らしている朔夜に行ってこいと声をかけたが、中々動き出さない足。
「好きなもの……ですか?」
『食いたいものあるだろ?』
欠伸を噛み殺しながら言う海に朔夜は頭を捻った。
「食べたいもの……」
『……好き嫌いあんのか?』
「ない、です」
『あっそ』
朔夜の返答に素っ気ない返事をし、海は椅子から立ち上がる。朔夜をその場に残したまま食堂のおばさんの元へと行った。
『おはよう、おばさん』
「あら、海くん!おはよう。今日はいつもより遅いのね」
『二日酔いが酷くてさっきまで寝てたんです』
「あら、珍しいじゃない」
隊士たちのご飯を作っているおばさんに声をかければ、にこやかに挨拶を返された。一言二言話をしてからおばさんに朝食を頼んだ。
「弟くんの分?」
『聞いたんですか?』
「局長さんからね。屯所に子供がいるけど気にしないで欲しいって言われたのよ」
『そう……』
こんな所まで近藤に気を遣われていたとは露知らず、海は知らずうちに近藤にされていた配慮に嬉しさと恥ずかしさの混じった顔ではにかんだ。
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