第40幕
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「海!大丈夫だったか!?」
「海くーん。無事だったみたいで安心したよオッサンは」
城から出てきた海を待っていたのは心配そうにそわそわしていた近藤と松平。海を見つけた途端、近藤は慌てて駆け寄ってきた。
大丈夫かと聞かれたが、その問いに答える余裕はない。
「海……?」
「どうしたァ?」
『なんでもない』
「海、何があったんだ?」
実の父親に会ってきました。なんて言っていいものなのだろうか。きっと近藤のことだから良かったじゃないかと喜ばれそうだ。そう思ったら何も言えず、海はただ口を噤んだ。
「海?」
『ごめん、近藤さん。ここから……今すぐ離れたい』
「え?あ、あぁ……わかった。屯所に帰ろう」
何も語らない海に近藤は首を傾げ続けたが、今は詳しく聞くべきではないと察してくれたのか、近藤は海の背を支えるように手を添えて車へと導いた。
「ゆっくり休むといい。屯所についたら起こしてやるから」
『ごめん、なさい』
「気にする事はねぇよ。疲れただろ。朝から呼び出してごめんな」
後部座席へと乗ると近藤によってドアが閉められる。ドアに寄りかって目を閉じると、ぱさっと何かが身体に掛けられた。うっすらと目を開けると、近藤が海に自分の上着を掛けているところだった。
「お休み、海」
ぽんっと頭を数回撫でてから近藤は座席へと戻る。かけられた上着の温かさに包まれながら海は夢の中へと入り込んだ。今日あったことを全て忘れ去るように。
⋆ ・⋆ ・⋆ ・⋆
暫く車を走らせて屯所へとつくと、隣に座っている松平が深いため息を零す。
「近藤、お前よ。部下に苦労かけすぎなんじゃねぇか?」
「だよなぁ……海やトシ達に面倒事ばかり押し付けている気しかしねぇ」
「ならもう少してめぇの在り方を考えろ」
「……はい」
いつもいつも海や土方達に苦労を掛けている気がする。その中でも一際、海に一番迷惑を掛けているだろう。自分が暴走した時にはすぐに止めに入ってくれるし、屯所内での騒ぎも的確に対処してくれる。本来ならば、近藤や土方がやらなければいけない書類やその他の仕事も海が担ってくれていることもある。
非番の日を潰してでも近藤の仕事を手伝うと申し出てくれる海には頭が上がらなかった。
そのせいで海に負担をかけてしまっているというなら、それは己の不甲斐なさだろう。今日、城に呼ば出された理由も海から聞けていない。もしかして己に何かしら問題があったのだろうか。思い当たる節なんていくらでも出てくる。
でも、何故海なのか。副長である土方が城に呼ばれて言及されるのであれば理解出来る。だが、海はただの平隊士でしかない。それにただ単純に自分の行いについての叱責であれば、松平と近藤に席を外せとも言わないはずだ。
今回の呼び出しは何もかもがおかしい。海を名指しで呼びつけたことも、自分ちを同席させなかった事も。
「なんでだ?」
「あ?どうした近藤」
「とっつぁん。なんで今日、海が呼ばれたんだ?」
「そんなもん決まってんだろうが。お前の日頃の行いをどうにかしろって言われたんだろうよ」
「"副長"を差し置いて平隊士にか?」
「……何が言いたい」
「もしかして今日呼ばれた理由は別の理由なんじゃ……」
近藤の言葉に松平は怪訝そうな表情を浮かべるが、すぐに真顔になった。松平もおかしいと思っていたのだろう。これから城へと引き返して理由を聞きに行こうかと言おうとした矢先、視界の端に映った人物に目を取られた。
屯所の門前に立つ男。白い着物に遠目からでも目立つ銀髪。その男は以前、海が拉致された時に世話になった人物だ。
「万事屋?なんでここに?」
銀時は屯所の入口で立ち尽くしていた。屯所へと踏み込もうとした彼に山崎がストップをかける。屯所から追い出されるようにして銀時は通りへと戻され、不機嫌そうに山崎を見ていた。
山崎と一言二言話をした後、銀時は屯所に背を向けて歩き出す。
その背を見送っていた山崎が屯所の中へ引っ込もうとした時、山崎と目が合った。こちらを見て目を見開いた山崎は「あっ!」と呟き、慌てて去っていった銀時を追っていった。
「何してんだ?アイツら」
山崎に連れられて戻ってきた銀時は近藤が乗っている車へと近づいてくる。近藤が座る助手席側の方へ来たかと思えば、コンコンッと窓をノックしてきたので近藤は窓を開けた。
「ちょっと後ろにいるやつ貸してくれない?用があるんだけど」
「悪いな、今眠っちまってるんだ」
「あ、そうなの?じゃあ、部屋まで連れてくわ」
「へ?あ、おい!万事屋!?」
だからまた今度にしてくれと言いかけた近藤を無視して銀時は後部座席のドアへと手をかける。ドアに寄りかかるようにして眠っていた海がゆっくりと倒れていく。慌てて支えようと手を伸ばしたが、海は近藤の手よりも早く銀時の腕に抱えられていた。
「んじゃ、借りてくから」
海を横抱きにした銀時は屯所の中へと消えていった。
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