第38幕
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「なーにしたのよ、海くーん」
『俺にもわかりませんよ』
「とっつぁんはなんか聞いてないのか?」
「いーや、お前と同じことくらいしか聞いてねェ」
不安を抱えたまま迎えた朝は酷く心地の悪いものだった。そんな状態のまま、海は食堂へと行き朝食を食べようとしたのだが、その途中で近藤に呼ばれてしまった。
外にはもう既に片栗虎が車で迎えに来ているとのことだったので、海は急いで自室に戻って上着と刀を手に取って慌てて屯所を飛び出た。
廊下を早歩きで歩いていた時、土方とばったり出くわして声をかけられたが、返事をしている暇もなかったし、何となくムカついたので挨拶代わり……そして朝食を食いっぱぐれた八つ当たりを土方にした。
突然、腹部を殴られた土方は廊下で昏倒していたが。
「一体なんの呼び出しなんだ……」
「さァな。最初はお前らがまた変なもんに噛み付いたのかと思ったんだがなァ。ありゃそんなもんじゃねぇな」
『……お怒りですか』
「いや、怒気は感じられなかった。けど……なんか不気味だったな。オジサン、チビっちゃうかと思ったよ」
「え、とっつぁん漏らしたの?城で漏らしたの?」
「漏らしてねぇよゴリラ」
「だって今漏らしたって」
「チビっちゃうかもって言っただろうが!なんで漏らしたって過去形なんだよ!てめぇの頭、ブチ抜いてやろうか!?」
「ちょ、とっつぁん!前!前見てェェェェ!!」
運転しながら近藤と話している松平は、いつの間にか前を見ることを忘れていて、目の前に迫る横断歩道の存在に気づくのが遅れた。横断歩道にはのんびりと歩いている老人の姿。速度を落とす気配のない車に怯えてその場で固まってしまっていた。
そこに突っ込もうとしている片栗虎に近藤が泣きながら叫ぶ。海は咄嗟に右後方確認をしてから松平へと叫んだ。
『右!ハンドルを右に切って!』
「おおおう!?」
片栗虎は海に言われた通りハンドルを右に切る。車体が大きく右側へと逸れたが、歩行者にぶつかることも、対向車に当たることも無く走り続けた。
『お偉いさん達に殺されるよりも先に松平のおっさんに殺されそう……』
「なんか言ったか?海くんよォ」
『なんでもありません。お願いですから安全運転で城へ向かってください』
「おう、任せろ」
最初から任せてるのにも関わらずこれだからなぁなんて、心中でボヤいた。そのあとも何度か死にかけそうになったが、近藤と海の的確なフォローによって未然に防いだ。
今度から車の運転は自分でしようと思った海だった。
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