第37幕
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「えっ、喧嘩したのか?」
『別に喧嘩っていうわけじゃ……いや、喧嘩のうちにはいるのか?』
「トシに怒られたんだろう?」
『まぁ……』
「そりゃ言われるに決まってるじゃねぇか。アイツが一番海のことを心配してたんだからよ」
副長室を飛び出したあと、自室に戻ろうとしたところで近藤さんに捕まった。どうやら土方との会話が廊下まで聞こえていたらしく、気になって見に来たとのこと。
『心配かけたのは悪いと思ってる。だから早めに復帰しようと思ったんだよ』
「うんうん。その気持ちも分からなくはねぇけど、ちょっと早かったなぁ」
『早くはないだろ。一ヶ月も休んでたんだからな?逆に休みすぎだって怒られんのかと思った』
今はもう動き回れる程に治ってきているのだから書類ぐらいは手をつけるべきだろう。外出の許可が下りていない今、海が出来ることといったらそれくらいしかない。
「海が今すぐ仕事をしなきゃいけないほど忙しくはねぇからそんなに気にしなくてもいいんだぞ?」
『そんなはずないだろ。毎日巡回に行って、上から面倒事押し付けられてんのにどこが忙しくないだ。さっき土方の部屋行った時だって書類で机の上埋め尽くされてたんだぞ?』
「あれはトシがどうしてもやるって言うからよ……」
『それほど他の奴らの手が回ってないってことだろ』
「いや、そういうことじゃなくてな?」
『なんだよ』
うーんと唸り始めた近藤はそれきり黙りこくってしまった。
土方の部屋に積まれていた紙の束はいつも見ている量の三倍ほどあった。あれを一人で処理するには二、三日かかるだろう。
土方は海と違って徹夜をするタイプじゃない。そうなればもっと時間がかかる。それなのにあの量を一人でやる切ると請け負ったのだ。
『無謀だろ。俺が倒れるよりあいつが先に倒れるんじゃねぇの?』
「そっちの方がいいと思ったんじゃないか?トシは」
『はぁ?』
「海が倒れるくらいなら自分が無理すればいいって。そう思ったんじゃねぇかなぁ」
『なんで。そんなことすれば作業効率下がるだけだろ。しかも平隊士の俺じゃなくて、副長である土方が倒れる方が問題あるじゃねぇか』
局長の次に頼りにされている人間が倒れるようなことはあってはならない。だからこそ下の者が代わって仕事をしているのだ。いざという時に上のものが指揮を取れない状態になっているなんてシャレにならない。
「そりゃそうかもだけど……仕事とか抜きにして、トシは海のこと心配してたんだよ」
『そんなに心配しなくても……』
「海が倒れるなんて中々ないだろ?それに今回のことに関しては自分のせいだとも思ってるからな」
『土方は何も悪くないだろ。俺が勝手に一人で行ったのが悪いんだから』
「一人で行かざるを得なかった、の間違いじゃないか?」
近藤にそう言われてグッと押し黙る。
「すまなかった。忙しかったとはいえ隊士たちの体調管理も見てやれなかったし、パトロールのスケジュール管理も個々に任せてた。それ全部担ってたの海だったんだな」
『別に……暇だったからやっただけだ』
そんな大層なことをしたつもりはない。ただ、近藤たちの負担が少しでも減ればいいと思ってパトロールの予定を組んだり、隊士たちのことを気にかけたりしていただけだ。謝られることもお礼を言われることもない。いつも通り仕事をしただけなのだから。
「海にはいつも助けてもらってばっかだなぁ」
『それほど忙しいってことなんだろ。雑用ぐらい請け負うよ』
「お前にとっては雑用かもしれないけど、俺らにとっては立派な仕事なんだよ。本当に助かってる、ありがとな」
しつこいぐらい礼を言われ、海が反応するのもめんどくさくなった時。ふと思い立ったことを口にした。それだけ感謝しているのであれば、多少のわがままくらいは聞いてくれるだろうと。
『近藤さん、ちょっと出かけたいんだけど』
「え゙?」
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