第37幕
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『よし……これでいいか』
確認し終えた書類を手にして海は自室を出た。
目を覚ましてから一ヶ月後。体調も精神的にも随分と回復していた。土方や銀時からはゆっくりでいいと言われていたのだが、そんなこと海が納得するわけもなく、体調を元に戻そうと必死だった。
以前のように元通りとまではいかないが、まだマシになった方だと思う。いつまでも子供のような振る舞いはしたくない。
それに自分が抜けてしまった穴埋めは土方と近藤がしているのだ。彼らの仕事量をこれ以上増やすわけにもいかない。
「海くん!お疲れ様!」
『山崎か。お疲れさん……って、お前またミントンしてんのかよ』
「はい!」
『いや、そこ元気よく返事するとこじゃねぇから……』
「あっ、すみません……。海くんが元気なったのが嬉しくてつい」
『あー……悪かった』
嬉しそうな顔を浮かべながら頭を下げる山崎に海は渋い顔を見せた。自分が不甲斐ないばかりに仲間に要らぬ心配をかけてしまったかと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
自分が床に伏せっていた間、山崎を始めとして他の隊士たちがゾロゾロと海の部屋を訪れた。見回りのついでに買ってきたと言って団子を渡してくるやつもいれば、体調が良くなるようにと漢方を買ってきてくれたやつもいる。今思えば、それらはついでなんかではなく、海のことを思ってわざわざ買いに行ってくれたのだろう。
彼らには大分心配を掛けてしまった。一人一人にお礼を言いに行ったら行ったで、まだ万全では無いのだから無理はしない方が良いと部屋に戻される始末だった。いつの間に彼らは過保護になったのか。
過保護になったのは隊士たちだけではない。銀時も海の体調が気になるといって何度も屯所に来ていた。
土方に文句を言われながらも銀時は海に会いに来て、一言二言話して帰っていく。最近は出禁にさせられたのか顔を見せに来なくなったが。
「海くん?大丈夫?もしかして久しぶりの書類処理で疲れちゃった?」
無言で立ち尽くしていると、山崎は心配げな眼差しを向けてきた。慌ててそうではないと笑うと、ホッと胸を撫で下ろす。
「無理はしちゃダメだからね。海くんはすぐ無理をするんだから」
『そんなことねぇよ。自分の限界はちゃんとわかってる』
「そう言って君はいつも徹夜するんだよ。今回は局長命令でもあるんだから大人しくしてないとダメだよ?」
『はいはい。わかってる』
ここにいては山崎の小言が増えそうだ。それに終わった書類を早く土方の所へ持っていかなくては。
適当に山崎の話を切って、海は副長室へと向かった。
『土方、いるか?』
「あぁ。入れ」
副長室の襖の前で声をかけ、許可を貰ってから部屋の中へと足を踏み入れようとした。が、襖を開けて一番に目に入ったのは土方の不機嫌顔。
「俺は部屋で休めと言ったはずだが?」
『それじゃ暇なんだよ。少しくらいいいだろ』
海が持っている書類を目にした途端、土方の眉間のシワはより深くなった。
「療養という名目でテメェに休み与えてんの忘れたのか」
『一日中部屋にこもりきりにならなきゃいけないほど悪くは無い。それは近藤さんにも言ってある』
「仕事を手伝えとは言われてねぇだろうが」
『部屋にいるんだからいいだろうが』
「居たとしても休めてねぇんじゃ意味が無いだろ!」
『そんなに怒ることかよ。治ったって本人が言ってるんだからそれでいいじゃねぇか』
しつこいと言い放てば、土方は持っていた筆をへし折る勢いで握りしめた。
「そんなんでまた倒れたらどうするつもりだ。今回の一件でどれだけ周りに迷惑かけてると思ってんだよ」
そう言われてしまえば何も言えない。周りに多大なる迷惑を掛けている自覚はあるのだ。だからその分、動いて返そうと思っていた。
『……悪かったな』
持っていた書類を土方に投げるように渡して副長室を飛び出た。後ろで土方が何か言っているような気がしたが全部無視して。
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