第36幕
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次の日、銀時は海と約束した通りまた屯所へと来ていた。門の前で突っ立っていると、山崎が素早く銀時の元へと駆け寄ってくる。
「旦那!今日も海くんのところへ?」
「あぁ。あいつ起きてるか?」
「起きてるも何も、朝からすごいですよ!」
「は?」
山崎が嬉しそうな顔で興奮しながら話す内容は銀時にとって喜ばしいことでもあるが、その反面妬みの感情も抱かせた。
「まだぎこちないけど話せるようになったんですよ!ご飯もちょっとだけ食べれましたし!」
少しずつだが、海の体調が良くなってきている。そう言って喜ぶ山崎と違って銀時の気分は急降下していた。
一番最初に話せたのは彼らじゃない。昨日の時点で海は話せていた。自分がいち早くその事に気づいたのに。
「ふうん。そう」
自分でも驚くほど冷たい返事。流石に山崎も気づいたらしく、怪訝そうに銀時を見つめてくる。
「旦那?」
「そりゃ良かったじゃねぇか。それ聞いて安心したわ」
じゃ、と片手を上げて踵を返す。今は海に会える気分じゃない。
「ちょ、旦那!海さんに会っていかないんですか!?」
「だって話せるようになったんだろ?」
それなら自分は必要ないだろうと続けると、山崎はえ?と目を丸くした。
「それはそうですけど……きっと、海くん待ってますよ?旦那が来るのを」
「俺じゃなくてもいいだろう。お前らがいるんだから」
「えぇ!?そんなの理由になりませんよ!」
海に会っていけとしつこく言ってくる山崎に舌打ちを漏らし、銀時は無理矢理にでもこの場を離れようと歩きだす。だが、山崎はそんな銀時を引き留めようと着物を掴んできた。
「ちょっと!旦那!」
「おい、離せよ」
「ダメです!海さんに会っていってくださいいいいい」
羽織りを掴む手を振り払おうと腕を振ったがビクともしない。何がなんでも中へと連れていこうとする山崎に段々とイライラが募っていく。
ここは仕方ない。しつこく食い下がってくる山崎が悪いのだ。
「いい加減にしろ!」
怒りに任せて山崎の頭へと握りしめた右手を振り上げた。
「いや、そんな強くやったつもりはないんだけど……」
まさか気絶するとは思わなかった。ぱたんと倒れた山崎を呆然と眺め、はたっと気づく。
ここに山崎を放っておいたらまずいのでは?
「ったく、めんどくせぇ野郎だな」
門から庭の方を覗いて誰もいないのを確認し、銀時は山崎を近くの茂みの中へと放り投げた。
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