第35幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そんな……海さん……嘘だ……銀さん!」
「嘘だヨ!海が銀ちゃん殺すなんて……嘘ネ!」
銀時に突き刺さる刀から目をそらす神楽と新八。桂も海と銀時の姿を見て悔しそうに噛み締め、握りしめた拳から血が垂れていた。
「終わったな。海、引き上げるぞ」
全て終わった。もう誰も海を止めることは出来ない。ここにいる理由はないと高杉はこの場を去ろうとしたが、海はその場から一歩も動かなかった。
『……ん……ぎ……』
「……かはッ!……ったく……」
ぴしゃっと血を吐き出して悪態をつく銀時。神楽と新八たちは絶望顔から一転、ホッと安心した表情を浮かべる。
「まったく……そんな泣くんじゃないよ……ボロボロで体がいうこときかないんだから……抱き締めてあげられないでしょうが」
『銀……っ……ごめ、ごめん』
「大丈夫だから気にすんな。ほら、おいで」
目に涙を溜めて震える声で銀時を呼ぶ海。その目には光が戻り、しっかりと銀時のことを映していた。
力が抜けた海の手から刀が滑り落ちて床に叩きつけられる。
泣きじゃくりながら立ち尽くす海にゆっくりと銀時は手を伸ばした。
その手へと躊躇いながらも手を伸ばそうとする海の緩慢な動きに焦れ、無理矢理相手の手首を掴んで胸へと引き寄せる。
「よしよし……怖かったな」
『ごめん、ごめんなさい……!ごめんなさい!』
「俺は大丈夫だから。大丈夫」
何度も何度も謝る海の背中を撫でて大丈夫だと返す。もう二度と離さないようにしっかりと両腕で抱えて。
そっと銀時は顔を上げる。前方に立つ高杉を恨みを込めた目で睨み、二度とこんなマネをするなと言いたげな顔で。
高杉もまた銀時を鋭く睨んでから背を向けて歩き出した。
「高杉、二度と海にこんなことするんじゃねぇ。次やったら今度こそてめぇをぶった斬るからな」
高杉にその言葉が届いたかは知らない。だが、これだけは言っておかないと気が済まない。
「銀時!」
高杉の背を見送ったあと、桂たちが銀時の傍へと駆け寄ってきた。
「銀さん!」
「銀ちゃん!」
「おーう、元気だなお前らは」
「銀時、海は……」
「大丈夫、と思いてェところだが……薬が薬だからな」
いつの間にか泣き疲れて眠ってしまったのか、胸元からは穏やかな寝息が聞こえた。そんな海を片腕で抱きながら立ち上がる銀時に桂が手を貸そうとしたが、銀時は首を横に振って断った。
「こいつは俺が連れてく」
「そんな怪我では支えられぬだろう!」
「そうだよ銀ちゃん!海ぐらいなら私抱えられるネ!」
「いや、それは海が起きた時に嘆くからやめてやれ?」
「でも、銀さん!」
「新八ィ!男はな守ると決めたら最後まで守るのが筋ってもんだ。どんだけ怪我しても、どんだけ辛くっても。大切な人ならなおさらな」
がしがしと新八の頭を撫で回して黙らせる。新八は銀時の顔を見て口を閉ざした。
.