第35幕
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「海、覚えてるか?」
結局、海を止めることは出来ず、銀時はその場に膝をついた。
刀についた血を振り払いながらこちらへと歩み寄ってくる海に向けて語りかける。
聞こえていなくても構わない。海が忘れていてもいい。ただ、今は少しだけでもいいから耳を貸してほしい。
そんな願いを込めて。
「ガキの頃に俺はただ人を殺すためだけに剣を振るった。そんな中、あいつが違う道を教えてくれた。俺があそこに来てからすぐにお前が来たよな」
『………………』
思い出すのは海と初めて会ったあの日。
第一印象こそは最悪だったが、段々と打ち解けていくとその印象はガラリと変わった。人を殺して汚れた己の手を海は優しく包むように握ってくれた。
周りの子供たちに恐れられ、いじめられることもしばしばあったが、その度に海が間に入って助けてくれた。
「鬼だのなんだのって怖がられていた俺をお前は怖がることなく、怯えることなく声をかけてくれたよな。俺はそんなお前に救われてたよ」
海の動きがぴたりと止まり銀時の前に立ち尽くす。依然としてその瞳に光は愚か、銀時すらも映していないが。
「お前だけは絶対に何があっても守ろうって思ったんだよ。俺をあの泥沼から引き上げてくれたお前を。例え腕が飛ぼうが足がなくなろうが……。そう思ってたのに……このザマか」
守ろうとしたのに何度も海を危ない目に合わせてきた。攘夷戦争の間に何度海が死にかけたことか。
銀時と高杉を庇って崖から落ちたあの日もだ。もっと早く手を伸ばしていたらそんなことにはならなかった。
海と一緒にあの崖から落ちていれば良かったのかと思う日もあった。
何度後悔したって過去は変えられない。どれだけ自分を恨んだって事実は変わることは無い。
だから、海と再会したあの日。どれだけ安心したことか。あの日まで海は死んでしまったと思っていたから。自分のせいでもう二度と会うこともないのだと諦めていたから。
今度こそ海を護る。例え、この身朽ち果てたとしても。どれだけ傷ついたとしても必ず。そう思っていたのに。
自分が言った護るという言葉がどれだけ薄っぺらいものなのかがよくわかった。
その結果がこれならば致し方ない。
「俺は……お前に殺されるならいいよ」
刀の切っ先が銀時の胸元へと向けられる。そのまま突き刺せば確実に銀時の心臓は止まるだろう。
「……今までごめんな」
辛い思いをさせて、苦労をかけてごめん。そんな想いを込めて銀時は海に一言謝った。
海が刀を引いて銀時へと突き刺す。切っ先は銀時へと突き刺さり周りには血が飛び散った。
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