第35幕
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「ぐっ……!!」
振り下ろされた刀は桂の左肩へと深く入った。辺りには勢いよく血が飛び散り、海の足元を真っ赤に濡らす。
血を失いすぎたせいで頭がクラクラして吐き気もする。これ以上、海を相手にするのは不可能だ。
「海……」
誰かこの状況をどうにかしてほしい。自分ではどうすることもできないと諦めた時、微かに子供の声が聞こえた。
「海、時間だ。引き上げるぞ」
興ざめだと高杉は吐き捨てるように言い、海に戻るように声をかける。その言葉に従って刀を鞘に戻して海は桂に背を向けた。
「海!ならん……ついて行ってはならん!」
「死に損ないがよく吠えじゃねぇか。情けで殺さねぇでやってるのによ」
「ふん……お前に情けをかけられるなどごめんだ」
「そうかい。ならここで最後だな」
もう少し。
「海、そいつを始末しろ」
もう少しで来る。
「俺の声でダメだとしても、きっと」
「あ?」
アイツらがここに来るまでの時間さえ稼げればいい。
「俺はダメだとしてもアイツならお前のことを戻せるだろう!」
こちらに背を向けている海に向けて叫ぶ。
桂の叫び声に気づいた子供たちが甲板へと姿を現すと、高杉は不機嫌そうに顔を歪めた。
「よぉ、ヅラ。なんだ?イメチェンでもしたのか?」
「銀時ッ……今はそれどころではない!」
「あ?なんだよそんなに騒いで。別にそんなデケェ声出さなくても聞こえて──」
桂の前に立っている海を見た銀時は目を見開いて驚きの表情。
海は銀時のことを見向きもせずに高杉の元へ行こうと足を踏み出す。
「お、おい!海!!」
「銀時!今のこやつは正気ではない!」
「正気じゃねぇってどういう事だよ!つか、お前その怪我……」
「頼む……俺では海を止められない。お前でなければ海を元に戻せん!」
状況を把握していない銀時は戸惑いながら海の元へと歩き出す。
「海、お前こんなところで何やってんだよ。てか、何その格好。そんな古い服どっから持ってきたんだよ」
もう少しで銀時の手が海に触れるというところで、海は戻したばかりの刀を引き抜いて銀時の首元へと突きつける。
「……は?」
「海さん!?な、何やって……!」
「同じアル……!あの時と同じネ!」
「じょ、冗談だろ……?何やってんの?」
「今の海に何を言っても無駄だ!あのバカが海に何かしたらしい」
「あのバカって……」
ゆっくりと銀時の目線が上がる。その先にはこちらをじとりと睨みつけている高杉。
「てめぇ何しやがった」
怒りのこもった声は重く空気を震わせる。自分たちに向けられているものでないのにも関わらず、子供たちは銀時の声に萎縮していた。
「お前に説明する義理はねぇ。海、行くぞ」
銀時の言葉を鼻で笑い、再度海に声をかける。
大人しく刀を引く海に銀時は唖然とし、慌てた様子で海の腕を掴んだ。
「海、お前何されたんだよ。なんで」
「お前もしつけぇな。そいつはもうお前らの声なんか聞いちゃいねぇ」
海は人形なのだからと笑う高杉。
「新八、ヅラ連れてけ」
「えっ、あ、はい!」
「銀時!」
「海は必ず連れ戻す。心配すんな」
銀時は高杉を睨みつけたままこの場から離れるように手を振る。新八に肩を借りて桂は海の側から離れた。
その時見えた銀時の表情は鳥肌が立つほど恐ろしいものだった。
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