第35幕
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「ぐっ……海!目を覚ませ!」
海と戦い始めてから数分と経たぬうちに身体は切傷だらけになっていた。服も至る所が斬れていてボロボロになっており、桂が動く度に足元に鮮血が散る。
息が上がっている桂と打って変わって、海は息一つ乱れていない。昔であれば、海の方が自分よりも先に体力が尽きていたはず。合わない間にまた鍛えていたのか、それとも高杉が何か手を加えたのか。
「クソッ……俺じゃ海に敵わない事くらい知っているだろう!いい加減起きないか!!」
何度叫んでも相手は眉一つ動かさない。無表情で刀を振るう姿は人形というよりもロボットのようだ。高杉に命令されて人を殺す殺人ロボット。
「(このままでは……)」
海の動きを止められる策を必死に考えては試すも全て弾かれてしまう。
どうにかしなければと考えるほど焦りが生じて手元が狂っていく。
そんな桂と海を高いところから見ていた高杉が呆れ混じりの深いため息を零した。
「おい、ヅラ。それじゃ終わらねェだろうよ。海、一思いに終わらせてやれ」
「貴様!その言葉……海を知っての言葉か!!」
そんな言葉を軽々しく口にした高杉に桂は言い表せぬ怒りを抱え、そして止めることの出来ない自分をこれでもかというほど恨んだ。
刀を構えた海が桂へとにじり寄る。どうすることも出来ない。海にこれ以上斬られるのも、己が海を斬るのも避けたい。
その為には海が振りかざして来る刀を受け止め続けなければならない。力でならまだ勝機はあるが、海の俊敏さには目が追いつかない。刃を受け止めたと思った次の瞬間にはもう海は目の前に居ない。それの繰り返し。
常に海の動きを見続けるには己の反射神経も動体視力も足りない。
今まで己が強いと思ったことはなかった。攘夷戦争で生き残ったのは運が良かったのと、仲間のおかげだと。
それでも心のどこかでは、銀時や海などと肩を並べられるほどだと思っていた。今まで何度も彼らの背を守り続けてきたのだからそれくらいの力はあると。
だから、海をここで抑えることも出来るはずだと思い込んでいた。
「俺では無理だ。お前を止めることなどできん」
友を助けられない悔しさ。そして自分の力量不足の憤り。
「すまない……!俺が……俺が弱いばかりに」
謝ることしか出来ない自分を許して欲しいと海に向けて頭を下げる。今の自分に出来ることはこれくらいしかないのだ。
『……か……』
「……海?」
ぽつりと声が聞こえ、咄嗟に顔を上げる。頭上には今にも振り下ろされそうな刀。だが、その手はピタリと止まっていた。
『か、つ……に……げ……』
「海!俺が分かるのか!?」
途切れ途切れだが確かに海は桂の名を呼んだ。もしかしたら元に戻ったのではないか。
声をかけ続ければ正気に戻せる。
その期待が桂の隙を生んだ。海の言葉をちゃんと聞かなかった桂は、振り下ろされる刀を避けれず身体で受け止めてしまった。
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