第34幕
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
倒れる高杉の元へとまた子が慌てて駆け寄り、二人の前に壁のようにして武市が立つ。
「ほう……これは意外な人とお会いする」
「この世に未練があったものでな。蘇ってきたのさ。かつての仲間に斬られたとあっては、死んでも死にきれぬというもの。なぁ、高杉。お前もそうだろう?」
「ククク……仲間ねぇ」
ふらつきながら刀を杖代わりにして高杉は立ち上がる。その顔には深い笑みを浮かべながら。
「まだそう思ってくれていたとは……ありがた迷惑な話だ」
桂の一撃を防いだのは一冊の本。かつて師から貰った本が高杉の懐から出てきたのを見た桂はふっと微笑む。
「まだそんなものを持っていたか。お互いバカらしい」
桂も胸元から同じ本を取り出す。その本も高杉と同様に刀傷と血にまみれていた。
「ふっ……お前もそいつのおかげで紅桜から守られたってわけかい。思い出は大切にするもんだねェ」
「いいや、貴様の無能な部下のおかげさ。よほど興奮していたらしい。ろくに確認もせずに髪だけ刈り取って去っていったわ。大した人斬りだ」
「逃げ回るだけじゃなく、死んだ振りまで上手くなったらしい。で?わざわざ、復讐にきたわけかい。やつを差し向けたのは俺だと?」
「あれが貴様の差し金だろうが、やつの独断だろうが関係ない。だが、お前のやろうとしていること、黙って見過ごすわけにもいくまい」
桂が言葉を切った瞬間、横から聞こえた爆発音。倉庫の方から巻き上がる灰色の煙。そこは量産した紅桜が多数置いてある場所。
高杉は爆破された倉庫を静観し、また子が桂へと怒りの矛先を向けて叫ぶ。それに同調した浪士達がみな桂へと刀を構え始めた。
そして桂も刀を構えて浪士達を相手しようとするが、新八と神楽によって邪魔された。先程から黙り込んでいたかと思えば、二人はその間にふつふつと桂への怒りを募らせていたらしい。
そんな中、新八達のいる船へと突っ込んできたエリザベス一行。浪士達とエリザベスたちの乱闘が始まり周りは一気に戦場と化す。
その片隅で高杉はその場を去ろうと桂たちに背を向けた。それを桂が見過ごすわけもなく、桂は急いで高杉の元へと走り出した。高杉にはまだ確認したいことがある。
桂が高杉の船に潜入している間に何度も見た姿。なぜ彼がここにいて、しかも高杉の隣に立っていたのか。
真選組に身を置いているのならここに居るはずがない。テロリストである高杉と親密な関係であると知られれば、即座に処刑されてしまうはずだ。
「なぜあいつがここに……」
去っていく高杉を迎えた友人。懐かしい戦装束に身を包んでいた彼は無表情でこちらを見ていた。
「高杉……貴様、海に何をした!!」
高杉は海を連れ添って船の奥へと姿を消した。意味深な笑みを桂に向けながら。
"桂さん、ここはいいから早く行ってください"
「エリザベス……」
この場を放置して彼らを追っていいものかと悩んでいた桂にエリザベスは先を急ぐようにと看板を立てる。桂は逡巡したのち、エリザベスの言葉に頷いてその場を後にした。
.