第33幕
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身体を起こそうと力を入れた途端に痛み出す腹部。そのあまりの激痛に呻き声を漏らすと、お妙がすかさず銀時へと寄ってきた。
「あっ、気がついたんですね。よかった……全然動かなかったから、このまま死んじゃうのかしらって思ったのよ。意識しっかりしてます?私の事わかります?」
そう言って自分の顔を指差しながら顔を近づけてくるお妙。そちらの方へと頭だけ動かして一言。
「まな板みたいな胸した女……でしょ」
瞬時に飛んできたのはお妙のグーパン。
怪我人をこんなぞんざいに扱うのはこのゴリラ女くらいだ。
「お前……なんでここにいんの?」
「新ちゃんに頼まれたんです。看病してあげてって」
「なんで看病する人が薙刀持ってんの?」
「新ちゃんに頼まれたんです。絶対安静にさせて、出かけようとしたら止めてくれって」
お妙の手にはキラリと光る薙刀。とても綺麗に手入れされている刃はどんなものでも切れそうだ。例えば人の首とか。
「止めるって何?息の根?そういや、新八と神楽はどうした?」
普段ならうるさい家の中が今日はとても静かである。お妙に看病を頼んだ新八が出かけていることはなんとなくわかるが、神楽は一体どこにいるのか。あの二人は桂のペットであるエリザベスから依頼を受けていたはず。新八があの場にいたということは、神楽も人斬りのことを追っているのかもしれない。
「あの……用事でちょっと出てます」
銀時から目線を外してお妙は言いづらそうにポツリと呟く。その態度に嫌な予感がした。
「用事って何よ?」
「いいからいいから。怪我人は寝ててください。さぁ、ジャンプ読みましょうね」
何かを隠すように話をすりかえるお妙を訝しげに見るも、これ以上話すつもりはないと言うように態とらしくジャンプを音読し始める。小説ならまだしも、漫画は音読されたって面白くない。セリフ読み、絵を見るからこそ楽しいのだ。
下手くそな音読を聞き流しながら銀時は視線をさ迷わせる。その時、お妙の横に綺麗に畳まれた黒い服とその上に置かれた刀が見えた。
「それ……」
「ん?あぁ、これですか?銀さんがずっと掴んで離さなかったんですよ。濡れてたし血で汚れてたから洗ったんです。ちゃんとポケットの中を見といてよかったわ。じゃなきゃこの御守り洗剤まみれになるところだったもの」
服の上にあったのは刀だけでなく、ボロボロになった御守りも乗せられていた。お妙はその御守りを銀時の手へと渡す。
それはかつて銀時が幼少時に海に渡したもの。もう十年以上経つというのにまだ持っていたのか。何度も直された跡がある御守りは随分と大切にされていたようだった。
「……貰ったものは大事にしましょうってか?」
朽ちかけていた神社に残っていた御守り。そんな物にご利益なんてあるはずもないのに、銀時は海を守って欲しいと願いを込めた。
渡した側はとっくに忘れていたというのに。
「早く……行ってやらねぇのと」
御守りが海を守り続けていた、なんて漫画みたいなことあるわけない。でも、今まで無事に生きてこれたのはこの御守りのおかげかもしれないと思ってしまう。
「別にお前にそんな力があるとは思わねぇけどよ」
言葉で否定しつつ、頭では早く海の元にこれを届けたいと焦る。
海に降りかかる不幸を弾いてくれるのなら……これ以上に有難いことはないのだから。
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