第53幕
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「大丈夫か?」
『なんとか……?』
ホテルを出た頃には空は真っ暗になっていた。
ふらふらする身体をなんとか立たせて歩き出す。まだ尻の方に違和感は残っているが、歩けなくはなさそうだ。
「遅くなっちまったな」
『悪い。俺が寝てたから』
「しょうがねぇよ。初めてのことだから疲れただろ」
『そ、れは』
にんまりと笑う銀時から顔を背ける。たった数時間前まで銀時と海は繋がっていた。それがぶわりと思い出されて一気に顔が赤くなる。
「海、お前それあっちでやるなよ?」
『あっちってどっちだよ』
「屯所で。そんな可愛い顔してたら襲われるぞ」
『襲われるって……返り討ちにすればいいだけだろ?』
「そういう意味じゃなくて、海が可愛すぎて食べられちゃうって言ってんの」
『食べる……』
「物理的にじゃねぇからな!?さっきしてた事を別の奴らにやられるって意味だからね!?」
回りくどい言い方をする銀時に首を傾げていると、銀時はくわっと目を見開いて海の肩を掴んで揺さぶった。
『そうならないように相手をぶちのめせばいいだろ?』
「そんな簡単に……ってああ、海くんは出来ちゃうもんね……」
『なんだよ。そんな心配されるようなことはないだろ』
「分かんねぇだろうが。海が強いのは知ってるけど、海より強いやつなんてザラにいるんだからよ」
『そうなったら……』
「なに──」
『そうなったら銀が助けて』
「へ……」
『自分の身は自分でどうにかするけど、どうにもならなくなった時は助けて欲しい』
今まで銀時にこんなことを言ったことはあっただろうか。
戦時中でも銀時に助けを求めることなんてしなかったと思う。それが今はこうして頼んでいる。誰かの手を借りないようにと強くなったはずなのに。
「当たり前だろ。約束しただろう。守るって」
『うん』
「俺がそばに居るから」
『うん』
頬に優しく手が添えられ、海はその手に自分の手を重ねる。
「海、」
徐々に近づいてくる銀時に海は静かに瞼を閉じた。唇を数回合わせてからそっと離れていく。
「それじゃ行くとしますか」
『……ん』
ボソッと耳元で好きだと呟かれたせいで耳が熱い。手を引かれながら歩き出した屯所までの道のりは長いはずだったのにとても短く感じた。
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