第44幕
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「おはよう、海。今日はお友達のところにお泊まりだったのかな?」
『なんで……ここに……』
万事屋の玄関先に立っているのは、にこやかに笑う西ノ宮。その後ろには時野が控えていた。
銀時と話していた時に新八が慌てた様子で寝室に転がり込んできた。インターホンが鳴ったから来客対応したのだが、その相手が海を名指しで呼んでいると。
早く連れてこいと凄まれた、と青ざめた顔をした新八を宥めて玄関先へと向かった。
なぜこの男がここに居るのか。どうして海がここにいることを知っているのか。聞きたいことは色々あったが、それは全て言葉にならずに消えた。
「真選組に寄ったんだけど海は居ないっていうから。どこにいるの?って聞いたらここに居るって聞いてね。来ちゃった」
『"聞いた"じゃねぇだろ……』
「ちゃんと聞いたよ?」
きっと西ノ宮は近藤たちを脅したのだろう。海の居場所を吐かなければ屯所を潰すとでも。あの人たちが見知らぬ人物に仲間の居場所をそう簡単に教えるはずがない。
そんな人たちの口から言わせるには権力を使った脅ししかない。
『勝手なことしてんじゃねぇよ!』
「海こそ勝手だろう?いつも屯所にいるのに急にこんな所に泊まったりしたらビックリするし、探す手間まで増えたじゃないか。悪い子だね」
"悪い子"という言葉に大袈裟なくらい肩が跳ねて身体が震えた。西ノ宮が一歩、こちらへと足を踏み出す。その瞬間、海は頭を抱えてその場に蹲った。
『ごめんなさ……!』
「なにしてんの」
条件反射で頭を守るようにしゃがんだ海の前へと入り込む白。
「君は?」
「何してんのって聞いてんの。ここ俺ん家なんだけど。何勝手に入ってきてんの?不法侵入ですか?警察呼びますけど?」
後ろ手に銀時に肩を押されて居間の方へと押し出される。傾いた身体は神楽と新八に支えられ、そのまま引きずられるようにソファのある部屋へと連れていかれた。
『銀時……!』
「あの人……なんか凄く嫌な感じ」
「あいつ目が笑ってなかったネ。あんなやつに近づいちゃダメアル」
子供らしい感覚で西ノ宮を嫌悪する新八と神楽。向こうには行かせないと言わんばかりに海の腕を掴んでいた。
『新八、神楽!手を離せ!銀時が……!』
「嫌アル。近づかない方がいいヨ」
「そうですよ。銀さんならきっと大丈夫ですから」
『ダメなんだよ。これ以上あいつに迷惑かけたくないんだよ。もう銀時の辛い顔見たくないんだよ』
だから離してくれ。そう二人に頼み込んだが、逆に腕を掴む手に力が込められてしまった。
「銀ちゃんも海のそんな顔見たくないネ。だからここに居てよ、海」
銀時がやり過ごしてくれるはずだからここで大人しく待ってよう?と二人に諭され、海は銀時の所へ戻ろうと動かしていた腕から力を抜いた。
玄関で銀時と西ノ宮が言い争っているのが聞こえる。西ノ宮が自分の名前を出す度に身体がビクつく。新八と神楽が海の手を握って安心させるように笑いかける。西ノ宮の声に耳を傾けないようにと二人は海の耳を塞いだ。
暫くしてから海の耳から離れていく手。目を閉じて俯いていた顔を上げると、後ろからふわりと抱きしめられた。
「大丈夫か?」
『銀時……』
「アイツはもう帰った。それと、多串くんたちが迎えに来てるわ」
『帰っ……た?』
「帰った。というか追い返した。だからもう今は居ないよ」
ここに西ノ宮はいない。脅威が去った事により海はホッと胸をなで下ろし、後ろにいる銀時へと寄りかかった。
「よく頑張ったな。偉い偉い」
『ガキ扱いかよ』
「本当のことだろうが。よく頑張ったよ、海は」
神楽たちがいる手前、何を頑張ったかまでは言わなかった。その意味を知っているのは自分と銀時だけ。
良い事をした子供を褒めるように言う銀時に海はむくれつつも、褒められて悪い気はしないので、恥ずかしさでほんのりと赤くなった顔を隠すように銀時の腕に顔を埋めた。
その後、銀時と土方の無駄な言い合いを聞いて笑い、心配したんだと引っ付いてきた朔夜を宥め、海は屯所へと帰った。
翌日、西ノ宮から呼び出されるなんてことになると知らずに。
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